「Ryzen 7 7800X3D」と「Core i7-14700F」どっちがおすすめ?性能を比較検証してみた
AMDのRyzen 7 7800X3D、インテルのCore i7-14700F、どちらもハイエンド帯のCPUで、人気が高いです。
特にBTOでは、RTX 4070 Ti SUPERなどのハイエンド帯のビデオカードとの組み合わせ先として、この両CPUはよく採用されています。
そこで今回は、Ryzen 7 7800X3D、Core i7-14700Fの両方を実際に比較検証してみました。
「Ryzen 7 7800X3D」と「Core i7-14700F」の仕様を比較
Ryzen 7 7800X 3D | Core i7-14700F | |
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CPUアーキテクチャー | Zen 4 | Raptor Lake |
CPUコア数 | 8 | 8(Pコア)+12(Eコア) |
CPUスレッド数 | 16 | 28 |
L2キャッシュ | 8MB | 28MB |
L3キャッシュ | 96MB | 33MB |
ベースクロック | 4.2GHz | 2.1GHz(Pコア)/1.5GHz(Eコア) |
ブーストクロック | 5.2GHz | 5.3GHz(Pコア)/4.2GHz(Eコア) |
TDP | 120W | 65W |
対応ソケット | AM5 | LGA1700 |
参考価格 2024年12月現在 | 87,000円 | 48,950円 |
コア数を比較すると、Core i7-14700FがRyzen 7 7800X3Dが圧倒しています。
Core i7-14700FはPコアが8基、Eコアが12基の合計20基のコア数なのに対して、Ryzen 7 7800X3Dのコア数は8基です。
一方、ゲーム性能に直結するL3キャッシュを比較すると、Ryzen 7 7800X3DがCore i7-14700Fを圧倒しています。
Ryzen 7 7800X3DのL3キャッシュ搭載量は96MBなのに対して、Core i7-14700Fは33MBです。Ryzen 7 7800X3Dは3D V-Cacheテクノロジーを採用しているので、コアの上に巨大な3次キャッシュを積層しています。
価格に関してはCore i7-14700Fが48,950円なのに対して、Ryzen 7 7800X3Dは87,000円です。
Ryzen 7 7800X3Dは近年、急激な価格高騰があるのに対して、Core i7-14700Fは徐々に価格が下がっていることもあって、価格差はかなり大きくなっています。
テスト機材
Ryzen 7 7800X3Dについては「ASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI」に、Core i7-14700Fについては「B760 AORUS ELITE (rev. 1.0)」に搭載して検証を行います。
なお、両CPUともにデフォルト状態で、オーバークロックや電力制限解除の設定は行いません。なお、Core i7-14700Fに対しては最新のマイクロコード0x12Bを適用してから検証を行います。
メインメモリの動作クロックについては、JEDEC準拠のDDR5-4800に統一しています。
ビデオカードはRTX 4070 Ti SUPERを使用します。
Ryzen 7 7800X 3Dテスト機材 | Core i7-14700Fテスト機材 | |
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マザーボード | ASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI レビュー記事 | B760 AORUS ELITE (rev. 1.0) |
CPUの動作設定 | TDP120W/PPT162W | PL1=65W/PL2=219W |
CPUクーラー | PCCOOLER GAME ICE K4 レビュー記事 | MUGEN6 BLACK EDITION レビュー記事 |
メモリ | PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2 | |
ビデオカード | Manli RTX 4070 Ti Super Gallardo レビュー記事 | |
システム用SSD | WD_BLACK SN770 NVMe レビュー記事 | WD Blue SN580 NVMe SSD レビュー記事 |
アプリケーション用SSD | Kingston NV2 レビュー記事 | |
電源 | MSI MAG A850GL PCIE5 | Corsair RM750e |
PCケース | 長尾製作所 SMZ-2WBT-ATX レビュー記事 | ADATA VALOR AIR レビュー記事 |
OS | Windows 11 HOME(24H2) | |
電源プラン | バランス |
Ryzen 7 7800X3DとCore i7-14700Fの現物です。
「Ryzen 7 7800X3D」と「Core i7-14700F」のクリエイティブ性能を比較
CINEBENCH 2024
CINEBENCH 2024は、3Dグラフィックスレンダリングに特化したCPUベンチマークの最新バージョンです。
マルチスコアの結果を確認すると、Core i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより約14%高いスコアでした。
シングルコアの結果を確認すると、Core i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより約10%高いスコアでした。
Blender Benchmark
Blender Benchmarkは、3Dモデリングソフト「Blender」を用いて、コンピューターのレンダリング性能を測定するベンチマークです。レンダリングにはCPUを選択しています。
結果を確認すると、Core i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより約10%高いスコアでした。
PC Mark 10 Extended
PCMark 10は、パソコンの総合性能を計測するベンチマークです。
テストは、パソコンの基本性能を計測する「Essentials」、オフィスアプリ系の処理性能を測る「Productivity」、写真・動画編集に関する性能を計測する「Digital Content Creation」で構成されています。
今回はGPUの影響を最小限に抑えるために、OpenCL、hardware-accelerated video processingをオフにしています。
Digital Content Creationの結果を確認すると、Core i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより約11%高いスコアでした。
Productivityの結果を確認すると、Core i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより約5%高いスコアでした。
Essentialsの結果を確認すると、Ryzen 7 7800X3DはCore i7-14700Fより約7%高いスコアでした。
x264 FHD Benchmark(動画エンコード)
x264 FHD Benchmarkは、CPUによる動画エンコード性能を測るためのベンチマークソフトです。
フルHD(1080p)の動画をH.264形式にエンコードする際の速度を計測し、結果は1秒あたりのエンコード速度(fps)として表示されます。
結果を確認すると、Core i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより約18%高いfpsでした。
RawTherapee(RAW現像)
RawTherapeeは、RAW現像のフリーソフトです。100枚のRAW画像に対して、JPEGに変換した時間を計測しました。
結果を確認すると、Core i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより約9秒早く処理を終えました。
「Ryzen 7 7800X3D」と「Core i7-14700F」のゲーム性能を比較
3D Mark
3Dベンチマークの3D Markです。 今回はCPU性能で差が生まれやすい、Fire Strikeを選択します。
結果を確認すると、Ryzen 7 7800X3Dが、Core i7-14700Fより約6%高いスコアを獲得しました。
【軽量級】Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・スケーリング:100%
※ベンチマークモードで計測
4K解像度ではGPU負荷の影響が大きく、平均fpsはほぼ横並びです。
一方、フルHD解像度では約8%、WQHD解像度では約6%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
【軽量級】Overwatch 2
・画質:エピック
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSSバランス
※BOT戦を1分間観戦して計測
4K解像度ではGPU負荷の影響が大きく、平均fpsはほぼ横並びです。
一方、フルHD解像度では約12%、WQHD解像度では約4%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
【中量級】Fortnite
・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSSバランス
※有志の方が作ってくれたベンチマークモードで計測。常に爆発エフェクトが発生し、負荷は重め。
フルHD解像度では約32%、WQHD解像度では約27%、4K解像度では約10%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
3D V-Cacheの効果が大きいゲームなので、Ryzen 7 7800X3Dの強さが際立っています。
【中量級】Forza Horizon 5
・画質:エクストリーム
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSSバランス
・フレーム生成:DLSS FG
※ベンチマークモードで計測
4K解像度ではGPU負荷の影響が大きく、平均fpsはほぼ横並びです。
一方、フルHD解像度では約4%、WQHD解像度では約2%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
3D V-Cacheの効果が効きづらいゲームなので、Ryzen 7 7800X3DとCore i7-14700Fとの間に大きさな差はありません。
【中量級】Deus Ex: Mankind Divided
・画質:ウルトラ
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
※ベンチマークモードで計測
4K解像度ではGPU負荷の影響が大きく、平均fpsはほぼ横並びです。
一方、フルHD解像度では約17%、WQHD解像度では約4%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
【中量級】Shadow of the tomb raider
・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSSバランス
※ベンチマークモードで計測
フルHD解像度では約33%、WQHD解像度では約23%、4K解像度では約5%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
3D V-Cacheの効果が大きいゲームなので、Ryzen 7 7800X3Dの強さが際立っています。
【中量級】ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー
・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS
・フレーレートしきい値:常に適用
※ベンチマークソフトで計測
フルHD解像度では約16%、WQHD解像度では約11%、4K解像度では約4%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
3D V-Cacheの効果が大きいゲームなので、Ryzen 7 7800X3Dの強さが際立っています。
【重量級】Cyberpunk 2077
・画質:ウルトラ
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSSバランス
・フレーム生成:DLSS FG
※ベンチマークモードで計測
4K解像度、WQHD解像度ではGPU負荷の影響が大きく、平均fpsはほぼ横並びです。
一方、フルHD解像度では約5%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
3D V-Cacheの効果が効きづらいゲームなので、Ryzen 7 7800X3DとCore i7-14700Fとの間に大きさな差はありません。
【重量級】Assassin’s Creed Mirage
・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSSバランス
※ベンチマークモードで計測
フルHD解像度では約27%、WQHD解像度では約14%、4K解像度では約4%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
3D V-Cacheの効果が大きいゲームなので、Ryzen 7 7800X3Dの強さが際立っています。
【重量級】Watch Dogs: Legion
・画質:最大
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSSバランス
※ベンチマークモードで計測
フルHD解像度では約31%、WQHD解像度では約25%、4K解像度では約6%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
3D V-Cacheの効果が大きいゲームなので、Ryzen 7 7800X3Dの強さが際立っています。
全10ゲームの平均fps
今まで検証した全10ゲームの平均fpsを各解像度ごとにまとめたものです。
フルHD解像度では約17%、WQHD解像度では約11%、4K解像度では約4%、Ryzen 7 7800X3Dが上回っています。
解像度が上がるにつれて差が縮まりますが、フルHD解像度のような低解像度になればなるほど、Ryzen 7 7800X3Dの強さが際立っています。
「Ryzen 7 7800X3D」と「Core i7-14700F」の消費電力を比較
最大消費電力を確認すると、CINEBENCH 2024実行時ではCore i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより141W高く、ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー実行時ではCore i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより68W高いです。
Core i7-14700FはPL1=65W/PL2=219Wに設定されているため、負荷100%時、一瞬だけ219Wまで上がり、その後は65Wに収まるような挙動をします。
平均消費電力を確認すると、CINEBENCH 2024実行時ではRyzen 7 7800X3DはCore i7-14700Fより8W高く、ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー実行時ではCore i7-14700FはRyzen 7 7800X3Dより18W高いです。
「Ryzen 7 7800X3D」と「Core i7-14700F」、どちらを選ぶべき?
ゲームをメインに考えているのなら、やはりRyzen 7 7800X3Dのほうがおすすめです。
GPUの影響が大きく、差がつきにくい最高設定ですら、フルHD解像度でCore i7-14700Fより20%高い平均フレームレートを発揮するゲームもあるくらいです。
例えば、Fortniteのように3D V-Cacheテクノロジーが効くゲームではフルHD解像度で、平均フレームレートが80fps~100fpsほど開きがあり、Ryzen 7 7800X3Dの方が快適にゲームをプレーできます。
フルHD解像度で、240fpsのような高リフレッシュレートでゲームをプレーしたいのであれば、Ryzen 7 7800X3Dを選んだ方が後悔は少ないと思います。
ただし、GPU依存度の高いゲーム、または4K解像度では差が縮まるので、そういったプレースタイルであれば、Core i7-14700Fでも十分活躍できます。
また、クリエイティブ性能に関しては、20コア28スレッドという強力なマルチスレッド性能によって、Core i7-14700Fが、8コア16スレッドのRyzen 7 7800X3Dを打ち負かします。
ゲームよりクリエイティブ作業をメインに考えているのなら、Core i7-14700Fの方がおすすめです。
最後に価格についてです。
Ryzen 7 7800X3Dの急激な価格高騰により、Ryzen 7 7800X3Dの価格は、Core i7-14700Fより約4万円(2024年12月現在)高くなっています。
正直、その差額で、例えば、RTX 4070 SUPERからRTX 4070 Ti SUPERにという風に、ビデオカードのアップグレードした方がゲーム性能の向上を実感しやすいです。
そのため、コストパフォーマンスという点においては、Core i7-14700Fの方に軍配が上がります。
まとめ
Ryzen 7 7800X3D、Core i7-14700Fの両方を実際に比較検証して素直に感じた印象としては、やはり、Ryzen 7 7800X3Dのゲーム性能は最強クラスだと改めて実感しました。
今回の記事がCPU選びの参考になれば幸いです。
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