「WD_BLACK SN770 NVMe」はウエスタンデジタルのWD Blackシリーズのエントリークラスに位置付けられるNVMe SSDです。
エントリークラスといっても、PCI Express 4.0(x4)接続に対応し、さらにコントローラーがWD(SanDisk)製、TLCNANDを採用と、スペックだけみてもコスパの良さが伝わってくるNVMe SSDです。
さらに、ゲームモードという独自機能によって、ゲーム利用時の性能をブーストできるという特徴もあります。
今回は「WD Blue SN580 NVMe SSD」と比較して、「WD_BLACK SN770 NVMe」の1TBモデルの実力を探っていきます。
本記事はWestern Digitalより商品を提供していただき、記事を作成しています。
「WD_BLACK SN770 NVMe」の仕様
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB |
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接続インターフェース | PCI Express 4.0(x4) | |||
形状 | M.2 2280 | |||
NANDフラッシュメモリ | TLC 3D NAND(112層 BiCS5) | |||
コントローラ | WD(SanDisk)独自コントローラ | |||
最大シーケンシャルリード速度(MB/s) | 4,000 | 5,000 | 5,150 | 5,150 |
最大シーケンシャルライト速度(MB/s) | 2,000 | 4,000 | 4,900 | 4,850 |
最大ランダムリード 4KB 速度(IOPS) | 240,000IOPS | 460,000 IOPS | 740,000IOPS | 650,000IOPS |
最大ランダムライト 4KB 速度(IOPS) | 470,000IOPS | 800,000IOPS | 800,000IOPS | 800,000IOPS |
耐久性(TBW) | 200 | 300 | 600 | 1200 |
製品保証 | 5年間 |
「WD_BLACK SN770 NVMe
独自のキャッシュ技術「nCache 4.0テクノロジー」を採用しているのが特徴です。NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして効率よく活用できます。
さらにPCI Express 4.0(x4)接続に対応していることもあって、DRAMキャッシュ非搭載でありながら、読み書き速度は最大5,150(MB/s)の性能を発揮します。
そのほかの特徴として「ゲームモード」があげられます。この機能をオンにすると、省電力機能を無効化して、ゲーム利用時の性能をブーストします。
ウェスタンデジタルはBLACKモデルをハイエンドに位置付けていますが、「WD_BLACK SN770 NVMe」に関してはDRAMキャッシュを省いて、エントリークラスのNVMe SSD並みの価格に抑えられています。
「WD_BLACK SN770 NVMe」の外観
「WD_BLACK SN770 NVMe
裏面にはチップはなく、片面実装になっています。
コントローラーは自社ブランドのSanDiskの刻印の入ったチップを採用。コントローラーのチャンネル数は4chです。DRAMキャッシュのチップは基板上からも確認できません。
NANDチップもコントローラーと同じくSanDiskのチップを採用。最新の112層のTLC NANDメモリ「BiCS5」を搭載しています。
「WD_BLACK SN770 NVMe」のパフォーマンスをチェック
テスト環境
早速、「WD_BLACK SN770 NVMe
テスト環境 | |
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マザーボード | MSI 「PRO B660M-A」 |
CPU | インテル 「Core i7-12700」 |
メモリー | Crucial 「CT2K16G4DFRA32A」(DDR4-3200/16GB×2) |
グラフィック | GAINWARD「GeForce RTX 4070 Ghost」 |
システム用ストレージ | KIOXIA「EXCERIA 1TB」 |
OS | Windows 11 64bit版 |
チップセット直結のM.2スロットだと若干の性能低下を引き起こすので、今回の検証では、CPU直結のM.2スロットにさしています。
比較対象として、「WD Blue SN580 NVMe SSD」の1TBモデルを用意しました。
「WD Blue SN580 NVMe SSD」はウェスタンデジタルのエントリークラス向けのNVMe SSDです。
外観もそっくりですが、PCI Express 4.0(x4)接続、DRAMキャッシュ非搭載、独自のキャッシュ技術「nCache 4.0テクノロジー」に対応、コントローラー、NANDもSanDisk製のものを採用と、共通点が多いです。
CrystalDiskMark 8.0.4
ストレージの基礎性能を測る「CrystalDiskMark 8.0.4」の結果です。
データサイズが1GiBの場合にはシーケンシャルリード、ライトともに公称値とほぼ同等の速度が得られています。「SN 580」の結果と比べてみても、シーケンシャルリード、ライトに関しては約1,000MB/sの差が開いています。
ただ、ランダムリード、ライトに関してはほとんど差がありませんでした。
データサイズを64GiBに設定した場合、全体的に速度は落ちていますが、SN 580と比べて、特にランダムリードに関してはそこまで落ち込みは激しくありません。
DRAMキャッシュ非搭載だと、データアクセスの範囲が広がるほど、ランダムリードの落ち込みが激しくなる傾向があります。実際、「SN 580」の場合、かなり落ち込んでいます。
一方、「SN770」の場合、64GBの範囲内であれば、極端な落ち込みは確認できませんでした。
ATTO Disk Benchmark 4.01.0f1
I/Oサイズごとのアクセス速度の変化を測る「ATTO Disk Benchmark 4.01.0f1」の結果です。
書き込み、読み込みともに、I/Oサイズが64KBあたりから4.50GB/秒前後になり、安定した速度を維持しています。「SN 580」の結果と比べてみても、読み込み、書き込みともに約1,000MB/sの差が開いています。
3DMark Storage Benchmark
ゲーム環境におけるストレージ性能を測る「3DMark Storage Benchmark」の結果です。
総合スコアで比較すると、「SN 580」に対して800近い差を付けました。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
4K解像度、最高設定のファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを実行し、ローディングタイムを計測。
「SN 580」に比べると約0.262秒早く、ローディングを終えました。
Blackmagic Disk Speed Test
動画編集におけるストレージ性能を測る「Blackmagic Disk Speed Test」です。
いずれの解像度においても、「SN 580」よりも高速でした。特に1080HD Readに関しては、約1,000の差をつけました。
ファイルコピー時間
「DiskBench」を使って、ファイルコピーのかかった時間を測ります。ファイル容量は30GBと120GB(30GB×4)の計2つのファイルを用意しました。
いずれのファイル容量においても、「SN 580」よりも高速でした。ただし、差はほとんどありません。
ゲームモードをチェック
「WD_BLACK SN770 NVMe
ゲームモードをオンにすると、省電力機能を無効化する代わりに、ゲーム利用時の性能をブーストします。ゲームモードをオンにすると、ランダムアクセス性能が若干向上します。
ゲーム環境におけるストレージ性能を測る「3DMark Storage Benchmark」でも若干の性能向上を確認しました。
「WD_BLACK SN770 NVMe」のSLCキャッシュ
「WD_BLACK SN770 NVMe
まず、HD Tune Proのファイルベンチマークで、200GB連続して書き込みます。「SN770」、「SN580」とも極端な落ち込みはないです。200GB書き込んだくらいでは、SLCキャッシュの枯渇は起きないようです。
次にSlow Markを使用し、全容量を連続書き込みし、SLCキャッシュの容量を調べます。
「SN770」の場合、書き込み速度は1466.8 MB/sで推移していき、346.5 GB書き込んだところでSLCキャッシュが枯渇します。その後は平均502.1MB/sで推移します。
「SN580」の場合、書き込み速度は平均1432.2MB/sで推移していき、343.8GB書き込んだところでSLCキャッシュが枯渇します。その後は、平均503.9MB/sで推移します。
「SN770」、「SN580」も、搭載NANDメモリの全容量をSLCキャッシュに割り当てるため、SLCキャッシュの容量は340GB超える大容量でした。また、両SSDともに、SLCキャッシュ枯渇後もSATA SSD並みの速度は出ているので極端に遅いわけではありません。
「SN770」、「SN580」ともに、LSLCキャッシュはディスクの空き容量の3分の1ほど確保されるようです。これは言い換えると、SLCキャッシュの容量はディスクの空き容量に左右されることを意味します。
そこで今度は空き容量約30%(300GB)の状態で検証したいと思います。
空き容量約30%の状態で、Slow Markを使用し、200GB連続書き込みをします。
「SN770」の場合、書き込み速度は1491.4 MB/sで推移していき、132.4GB書き込んだところでSLCキャッシュが枯渇します。その後は平均551.75MB/sで推移します。
「SN580」の場合、書き込み速度は平均1432.2MB/sで推移していき、130GB書き込んだところでSLCキャッシュが枯渇します。その後は、平均459.5MB/sで推移します。
SLCキャッシュの量は「SN770」、「SN580」ともに同じくらいの容量ですが、SLCキャッシュ枯渇後は若干、「SN770」のほうが書き込み速度は速いようです。
SSDは空き容量が少なくなると性能低下すると言われています。空き容量100%と10%(100GB)の状態で性能に変化が起きるのか、3DMark Storage Benchmarkを実行して検証しました。
「SN770」は性能低下を起こしていませんが、「SN580」は若干の性能低下を確認しました。
「WD_BLACK SN770 NVMe」の温度をチェック
「WD_BLACK SN770 NVMe
おそらく、「ドライブ温度」、「ドライブ温度3」はNANDメモリの温度で、一番発熱しやすい「ドライブ温度2」がSSDコントローラーの温度だと思われます。
ドライブ温度 | NANDメモリの温度 |
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ドライブ温度2 | SSDコントローラーの温度 |
ドライブ温度3 | NANDメモリの温度 |
ヒートシンクを取り外し200GB連続読み込み・書き込みを実行中、ハードウェア情報取得ソフト「HWiNFO64」で温度を計測します。さらに読み込み・書き込み速度をチェックして、サーマルスロットリングが発生していないかを見ていきます。
結果は以下の通りです。
ドライブ温度(NAND)の最高温度は62℃、ドライブ温度2(コントローラー)の最高温度は84℃、ドライブ温度3(NAND)の最高温度は54℃まで上がりました。
読みこみ・書き込み速度ともに、サーマルスロットリングによる速度低下は確認できませんでした。
PCI Express 4.0(x4)接続対応のNVMe SSDとしては、「WD_BLACK SN770 NVMe」の発熱はかなり大人しいと言えます。
ただ、今回ベンチ台で計測したので、もしPCケースに入れて運用する場合、ヒートシンクをつけることを推奨します。
サーモグラフィーで表面温度を確認してみました。「HWiNFO64」よりも低い温度が測定されましたが、やはりコントローラーの発熱が大きいのがこのサーモグラフィーでも確認できました。
専用ツール「Western Digital Dashboard」
Western Digitalが提供するツール「Western Degital Dashboard」で各種設定や状態を確認できます。リアルタイムのSSD温度の計測や、ファームウェアのアップデート、ドライブの診断等をおこなえます。
また、ゲームモードのオン・オフもこちらのソフトから設定します。
下記サイトからダウンロードできます。
「WD_BLACK SN770 NVMe」のメリット・デメリット
まとめ
今回の検証を見てきましたが、「WD_BLACK SN770 NVMe」は価格が1万円前後というエントリークラスのNVMe SSDと同じなのに、破格の性能を有していることが確認できました。
「WD_BLACK SN770 NVMe」は、DRAMキャッシュレスですが、独自のキャッシュ技術「nCache 4.0テクノロジー」が有効に働いており、明確な性能低下を感じません。
さらにSLCキャッシュも346.5GBと容量に余裕があり、大量のデータを書き込んでも速度低下は起きにくいです。
特にゲームモードが搭載されており、ゲーム用のディスクとして活用したい方にもおすすめできます。
今回比較対象とした「WD Blue SN580 NVMe SSD」は、まるでミニ「WD_BLACK SN770 NVMe」かのような性能を有しており、性能自体は悪くないです。
ただ、「WD_BLACK SN770 NVMe」との価格差は現状ほとんどないのが残念です。今後もし価格が下がれば、「WD_BLACK SN770 NVMe」の代替として人気が出そうです。
動画バージョンはこちら↓。