メモリのシングルチャネルとデュアルチャネルで性能に違いはあるのか?検証してみた。
メモリを1枚だけ差す「シングルチャネル」と、2枚1組で差す「デュアルチャネル」の2種類があります。
この「シングルチャネル」と「デュアルチャネル」で性能に違いはあるのでしょうか?実際に検証してみました。
メモリのチャネル数について
CPUにはメモリコントローラーと呼ばれる部分があって、そこではCPUとメモリの間のデータの受け渡しをします。
このデータの受け渡しにはいくつか種類があり、代表的なのを下記に記します。
- メモリ1枚を使う→「シングルチャネル」
- メモリ2枚を使う→「デュアルチャネル」
- メモリ3枚を使う→「トリプルチャネル」
- メモリ4枚を使う→「クアッドチャネル」
メモリ1枚だけの「シングルチャネル」でもパソコンは動きます。
ただ、メモリーには、高速化技術があります。複数のメモリーモジュールに並列にアクセスして高速化するというものです。
その高速化技術を使うためには、「デュアルチャネル」や「クアッドチャネル」といった、メモリーを複数枚使う必要があります。
理論上は「シングルチャネル」<「デュアルチャネル」<「トリプルチャネル」<「クアッドチャネル」と、メモリーの枚数が増えれば増えるほど、より高速化します。
組み合わせるメモリーは、メーカー、容量、型番、生産時期など、全く同じものを使うのがおすすめです。
万が一、別のメーカーのメモリーや型番の違うメモリーを使用した場合、うまく動作しない可能性があります。
つまり、初めから2枚1組、若しくは4枚1組で売られているものを買えば失敗のリスクが減らせるということです。
現在、「トリプルチャネル」はほぼ廃れているので、実質メモリーの組み合わせは、「シングルチャネル」、「デュアルチャネル」、「クアッドチャネル」の3種類あると理解してもらっていいです。
ゲーミングパソコンの中にはシングルチャネル構成のものがある
BTOパソコンでよくあるのが、メモリが8GB×2の計16GBという「デュアルチャネル構成」になっていることです。ただ、まれに16GB×1という構成も見かけます。
例えば、上の画像はBTOメーカーのFRONTIERのセール対象品のスペック表です。メモリのところを見ると、16GB(16GB×1)、つまりシングルチャネル構成になっています。
自分の推測ですが、シングルチャネル構成になっているので、この低価格を実現しているのだと思います。
そこで、実際に、「シングルチャネル」と「デュアルチャネル」で性能に違いが出るのか、自分で検証をしてみたいと思い、今回の記事を作成しました。
シングルチャネルとデュアルチャネル、それぞれで実際に検証
検証に使ったパソコンのスペック
CPU | core i5-12700 | |
CPUクーラー | SE-224-XTA | |
CPUグリス | MX-4 | |
マザーボード | MSI PRO B660M-A | |
メモリ | DDR4-3200 8G×2(KD48GU880-32A160U) | DDR4-3200 16G×1(W4U2666CX1-16G) |
グラフィックボード | RTX3060 | |
ストレージ | Crucial P2 1TB | |
電源ユニット | 750W(V750 Semi-Modular RS750-AMAAG1-JP) | |
OS | Windows 11 Home | |
Nvidia ドライバ | 512.59 |
それでは検証を始めます。使用するメモリは下記の通りです。
メモリの名称 | |
シングルチャネル(16GB×1) | CFD W4U2666CX1-16G(PC4-21300) |
デュアルチャネル(8GB×2) | KLEVV KD48GU880-32A160U(PC4-21300) |
両方のメモリーとも周波数、レイテンシともに同一にして検証しました。
ベンチマーク
Sandra
デュアルチャネルにすると、約2倍ほど、帯域幅のスピードが上がっています。
ただ、レイテンシに関しては違いはほとんどなかったです。
Cinebench R23
シネベンチR23のスコアにはほとんど差がありませんでした。
PC MARK 10
PC MARK 10です。CPUのみのベンチをとりたかったので、グラボを無効化して検証しました。ほとんど差はありませんが、「Productivity」と、「Digital Content Creation」では差が開きました。
7 ZIP Benchmark
圧縮、解凍ソフトの7 ZIPのベンチマークです。展開はそこまで差は開かなかったですが、圧縮に関してはかなりの差が開きました。
エンコード
x264 Fhd Benchmarkです。H.264のエンコード速度を計測するベンチマークソフトです。フレームレートはほんの少し差が開きました。
エンコードにかかった時間 | |
シングルチャネル | 18分19秒 |
デュアルチャネル | 10分59秒 |
Power directerで約5GBの動画をH.264にエンコードして、かかった時間を計測しました。相当の差が開きました。
ゲーム性能
Time Spy
DirectX 12の3Dゲームのベンチマークソフト、Time Spyです。CPUスコアでかなりの差が開き、結果的に総合的なスコアであれ、Time Spy Scoreでも差が開きました。
Fire Strike
DirectX 11の3Dゲームのベンチマークソフト、Fire Strikeです。こちらはTime Spyほど差は開かなかったです。
FF14ベンチマーク
FF14ベンチマークです。約1000ほど差が開きました。また、平均フレームレートも6ほど、デュアルチャネルのほうが上でした。
FF15ベンチマーク
FF15ベンチマークです。約400ほど差が開きました。
Apex Legends
Apex Legendsの演習場を周回した際の平均フレームレートです。若干ですが、デュアルチャネルのほうがフレームレートが出ています。
Fortnite
Fortniteのクリエイティブ島を周回した際の平均フレームレートです。若干ですが、デュアルチャネルのほうがフレームレートが出ています。
rainbow six siegeベンチマーク
rainbow six siegeベンチマークです。平均フレームレートは、10以上差が開きました。
Forza Horizon 5ベンチマーク
Forza Horizon 5ベンチマークです。若干ですが、デュアルチャネルのほうがフレームレートが出ています。
Cyber Punk 2077ベンチマーク
Cyber Punk 2077ベンチマークです。若干ですが、デュアルチャネルのほうがフレームレートが出ています。
あまり差がないものもありましたが、全体的にデュアルチャネルのほうがシングルチャネルより性能が出ています。
シングルチャネルとデュアルチャネルでなぜ性能に違いがでるのか?
メモリ容量は同じなのに、なぜシングルチャネルとデュアルチャネルで、性能に違いがでるのでしょうか?
答えは帯域幅の違いです。
帯域幅というのは、データ転送量の多さのことです。この帯域幅が広いほど、データの転送量が増えることを意味します。
DDR4-2666のメモリ1枚の「シングルチャネル」の場合、1秒間に21.3GBのデータ転送が可能になります。これが「デュアルチャネル」になると、単純に帯域幅が2倍になり、1秒間に42.6GBのデータ転送が可能になります。
これは単純に道路を想像したらわかりやすいです。
大量のデータの転送という状況を想定します。デュアルチャネルだと車線が2つでシングルチャネルだと車線が1つです。
車線が2つあるデュアルチャネルは車の流れはスムーズです。一方、車線が1つしかないシングルチャネルのほうは渋滞が発生しています。
つまり、チャネルが増えるというのは、車線が増えることを意味し、データの転送量は向上し、より大容量のデータのやり取りがスムーズになるということです。
まとめ
シングルチャネル、デュアルチャネル、どちらにするか迷っているのなら、特に理由がなければ、デュアルチャネルをおすすめします。
やはりシングルチャネルとデュアルチャネルで性能差は明確にあります。
相性問題もあるので、1枚だけメモリを買ってあとで買い足すより、初めから2枚1組のセットになっているものを買うことをおすすめします。
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