Ryzen 7 7800X3Dは2023年4月に発売されたAMDのデスクトップ向けCPUです。
Zen 4アーキテクチャと3D V-Cacheテクノロジーを採用し、96MBという大容量のL3キャッシュを搭載している、8コア16スレッドのCPUです。
今回の記事ではRyzen 7 7800X3Dのゲーミング性能とクリエイティブ性能を検証し、Ryzen 7 7800X3Dを搭載した、おすすめゲーミングPCを紹介します。
Ryzen 7 7800X3Dとは
CPUアーキテクチャー | ZEN4 |
コア/スレッド | 8/16 |
ベースクロック | 4.2GHz |
ブーストクロック | 5GHz |
L2キャッシュ | 8MB |
L3キャッシュ | 96MB |
TDP | 120W |
内蔵グラフィック | Radeon Graphics |
対応ソケット | AM5 |
参考価格 | 56,900円~※2024年7月現在 |
Ryzen 7 7800X3Dは、ZEN4アーキテクチャーを採用したCPUです。
何よりも特徴的なのが、3D V-Cacheテクノロジーを採用している点です。これによって、コアの上に巨大な3次キャッシュを積層することが可能になりました。
前世代のZEN3のRyzen 7 5800X3Dも同じく3D V-Cacheテクノロジーを採用しているため、これをZEN4ベースにしたのが、Ryzen 7 7800X3Dと言えます。
正直、この3D V-Cacheテクノロジー、ゲーム以外の用途では全く役に立ちません。
ただ、この大容量のL3キャッシュによって、ゲームに限って言えば、フレームレートを大幅に向上させ、ハイエンド帯のGPUのポテンシャルを引き出すことが可能になります。
なお、最上位モデルにRyzen 7 5800X3Dよりコア数が多いRyzen 9 7950X3Dがありますが、3D V-Cacheテクノロジーが使えるコアはどちらのCPUも8基のみです。
Ryzen 9 7950X3Dの場合、CCD(チップレット※CPUコアの塊)が2基あり、ゲームによって、3D V-Cacheテクノロジーのないコアに割り当てられるため、ゲームパフォーマンスが落ちる可能性があります。
その点、Ryzen 7 7800X3DはCCDが1基しかないため、ゲームパフォーマンスが落ちる心配はありません。
どんなゲームでもゲームパフォーマンスを引き出せる、Ryzen 7 7800X3DのほうがRyzen 9 7950X3Dより優秀だと言われるのがそれが理由です。
なお、競合はインテルのCore i7-14700が考えられますが、Ryzen 7 7800X3Dのほうがゲーム性能が高く、さらに扱いやすさ、価格面などを考えると、あえて選ぶ必要性は皆無です。
実質、ライバル不在でRyzen 7 7800X3D一択と言える状況です。
Ryzen 7 7800X3Dのパッケージです。パッケージは豪華仕様となっています。ちなみにパッケージは巨大にも関わらず、リテールクーラーは一切付属しません。
ヒートスプレッダーはAM5のCPUでおなじみの特徴的なデザインをしています。裏面はCPUソケットのピンと接触するための接点がびっしりと埋め込まれています。
「CPU-Z」でも、L3キャッシュの容量が96MBなのを確認できます。
テスト環境
検証環境 | |
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CPU | AMD Ryzen 7 7800X3D |
GPU | Manli RTX 4070 Ti Super Gallardo レビュー記事 |
CPUクーラー | サイズ MUGEN6 Black Edtion レビュー記事 |
CPUグリス | EVERCOOL Thermal GS-04 |
マザーボード | ASUS PRIME A620M-K-CSM |
メモリ | FURY Renegade DDR5 RGB メモリ(型番:KF580C38RSAK2-32)(16GB×2) (DDR5-4800に設定) レビュー記事 |
ストレージ | Western Digital WD_BLACK SN770 NVMe 1TB レビュー記事 |
電源ユニット | Corsair RM750e |
PCケース | 長尾製作所 SMZ-2WBT-ATX レビュー記事 |
OS | Windows 11 Home 64bit版 |
マザーボードは、A620チップセット搭載のASUS PRIME A620M-K-CSMを使用。VRAMヒートシンクすらない、廉価グレードのマザーボードですが、Ryzen 7 7800X3D自体低発熱なので、問題なく性能を引き出せます。
GPUはRTX 4070 Ti SUPERを使用。RTX 3090以上の性能を発揮するハイエンドのGPUです。
メモリは16GB×2の32GB容量のKingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリ(型番:KF580C38RSAK2-32)を使用。DDR5-8000に対応するオーバークロックメモリですが、今回の検証ではJEDEC準拠のDDR5-4800に設定しています。
CPUクーラーは空冷のサイズ MUGEN6 Black Edtionを使用。
Ryzen 7 7800X3Dのゲーミング性能を検証
3DMark Fire Strike
3D MarkのFire Strikeです。
Ryzen 7 7800X3Dは43,819というスコアを記録。
Core i5-14600KFに対して、約4.8%上回っています。
3DMark Time Spy
3D MarkのTime Spyです。
Ryzen 7 7800X3Dは21,159というスコアを記録。
こちらはFire Strikeと違い、Ryzen 7 7800X3Dは、Core i5-14600KFに対して、約6%下回っています。
Time Spyはコア数の多いCPUが高スコアを出しやすい傾向があります。
Core i5-14600KFは14コア20スレッドと、8コア16スレッドのRyzen 7 7800X3Dと比べて、コア数が多いので、それがそのままスコアでも表れています。
このようにコア数の多さが有利になるベンチマークでは、Ryzen 7 7800X3Dは若干スコアは伸びにくい傾向があります。
Call of Duty: Modern Warfare III
Call of Duty: Modern Warfare IIIです。グラフィックは一番負荷の重い極限に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドット、2560×1440ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Core i5-12400がトップで横並びとなりました。
3,840×2,160ドットではすべてのCPUが横並びとなっています。
Cyberpunk 2077
Cyberpunk 2077です。グラフィックは一番負荷の重いウルトラに設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KFがトップで横並びとなっています。
2560×1440ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Ryzen 7 5700X、Core i5-12400がトップで横並びとなりました。
3,840×2,160ドットではすべてのCPUが横並びとなっています。
Deus EX
Deus EXです。グラフィックは一番負荷の重いウルトラに設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドットでは、トップがRyzen 7 7800X3D、次点でCore i5-14600KFとなりました。
2560×1440ドットでは、トップがCore i5-14600KFで、次点でCore i5-14400F、Ryzen 5 7500F、Core i5-12400、Ryzen 7 7800X3Dが横並びとなっています。
3,840×2,160ドットでは、トップがRyzen 5 7500Fで、次点でRyzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Core i5-12400、Ryzen 7 5700Xが横並びとなりました。
Far Cry 6
Deus EXです。グラフィックは一番負荷の重い最高に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドット、2560×1440ドットでは、トップがRyzen 7 7800X3D、次点でCore i5-14600KFとなりました。
3,840×2,160ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Core i5-12400がトップで横並びとなりました。
FINAL FANTASY XIV:黄金のレガシー
FINAL FANTASY XIV:黄金のレガシーです。グラフィックは一番負荷の重い最高に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドット、2560×1440ドットでは、トップがRyzen 7 7800X3D、次点でCore i5-14600KFとなりました。
3,840×2,160ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Core i5-12400、Ryzen 7 5700Xがトップで横並びとなりました。
Fortnite
Fortniteです。グラフィックは一番負荷の重い最高に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドット、2560×1440ドットでは、トップがRyzen 7 7800X3D、次点でCore i5-14600KFとなりました。
3,840×2,160ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KFがトップで横並びとなりました。
Ghost of Tsushima
Ghost of Tsushimaです。グラフィックは一番負荷の重い最高に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドットでは、トップがCore i5-14600KF、次点でRyzen 7 7800X3Dとなりました。
2560×1440ドットでは、Core i5-12400、Core i5-14600KF、Ryzen 7 7800X3D、Ryzen 5 7500Fがトップで横並びとなりました。
3,840×2,160ドットでは、Core i5-12400、Core i5-14600KF、Ryzen 7 7800X3D、Ryzen 5 7500Fがトップで横並びとなりました。
Tom Clancy’s Rainbow Six Extraction
Tom Clancy’s Rainbow Six Extractionです。グラフィックは一番負荷の重い最高に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドットでは、トップがCore i5-14600KF、Ryzen 7 7800X3D、Ryzen 5 7500F、Ryzen 7 5700Xがトップで横並びとなりました。
2560×1440ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Core i5-12400、Ryzen 7 5700Xがトップで横並びとなりました。
3,840×2,160ドットでは、すべてのCPUが横並びとなりました。
Assassin’s Creed Mirage
Assassin’s Creed Mirageです。グラフィックは一番負荷の重い最高に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドットでは、トップがCore i5-14600KF、次点でRyzen 7 7800X3Dとなりました。
2560×1440ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KFがトップで横並びとなりました。
3,840×2,160ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Core i5-12400、Ryzen 7 5700Xがトップで横並びとなりました。
Watch Dogs: Legion
Assassin’s Creed Mirageです。グラフィックは一番負荷の重い最大に設定しています。
平均フレームレートを見ると、1,920×1,080ドットでは、トップがRyzen 7 7800X3D、次点でCore i5-14600KFとなりました。
2560×1440ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KFがトップで横並びとなりました。
3,840×2,160ドットでは、Ryzen 7 7800X3D、Core i5-14600KF、Ryzen 5 7500F、Core i5-14400F、Core i5-12400、Ryzen 7 5700Xがトップで横並びとなりました。
全10ゲームの平均fps
全10ゲームの平均fpsを各解像度ごとにまとめました。
Ryzen 7 7800X3Dは、フルHD解像度ではCore i5-14600Kに対して約7%上回っています。逆にWQHD解像度、4K解像度では差がほとんどありません。
GPU負荷が高くなればなるほど、CPUによる差が生まれにくい状況となっているからです。
3D V-Cacheテクノロジーが効くゲームタイトルにおいては、Ryzen 7 7800X3Dの平均fpsは凄まじく向上します。例えば、フルHD解像度のFortniteでは、Core i5-14600KFに対して、約21%平均fpsが向上しています。
Ryzen 7 7800X3Dのクリエイティブ性能を検証
CINEBENCH R23
CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCinebench R23です。
マルチコアにおいて、Ryzen 7 7800X3Dは18,114というスコアを記録。
Core i5-14600KFに対して、約24%下回っています。14コア20スレッドあるCore i5-14600KFとの差はやはり大きいです。
一方、同じ8コア16スレッドのRyzen 7 5700Xに対しては、約28%上回っています。
シングルスコアにおいて、Ryzen 7 7800X3Dは1,783というスコアを記録。
Core i5-14400F、Ryzen 5 7500Fとほぼ横並びです。一方、Core i5-14600KFに対して、約14%下回っています。
Crossmark
クリエイティブ性能を測定するCrossmarkです。
Ryzen 7 7800X3Dは1,783という総合評点を記録。
インテル製CPUが有利なテストなので、Ryzen 7 7800X3Dのスコアはあまり伸びず、Core i5-12400より低い結果でした。
Blender Benchmark
3DCGソフトの「Blender」ベースのレンダリングベンチマーク「Blender Benchmark」です。
Ryzen 7 7800X3Dは266というスコアを記録。
Core i5-14600KFに対して、約12%下回っています。一方、Ryzen 7 5700X、Core i5-14400F、Ryzen 5 7500Fに対して、約30%上回っています。
x264 FHD Benchmark
H.264形式のフルHD動画のエンコード性能を測定する、「x264 FHD Benchmark」です。fpsが高いほど、エンコード処理性能が高いことを意味します。
Ryzen 7 7800X3Dは80fpsを記録。
Core i5-14600KFに対して、約26%下回っています。一方、Core i5-14400F、Ryzen 5 7500Fに対しては約9%上回っています。
コア数が少ないこともあり、Ryzen 7 7800X3Dのクリティブ性能はあまり高くないと思っていましたが、シングル性能が良好なこともあって、意外と健闘している印象です。
Ryzen 7 7800X3Dの消費電力
Ryzen 7 7800X3Dの消費電力を確認します。
アイドル時は起動直後10分放置した最低値を、高負荷時は「Cinebench R23:10 minutes」、「FINAL FANTASY XIV:黄金のレガシー」のベンチマーク実行時の最高値を採用し、計測ソフトの「HWiNFO」で情報を取得します。
TDPは120Wですが、高負荷時では最大80Wまでしか上がりません。ゲーム中でも最大60Wと、省電力性能は非常に優秀です。
Ryzen 7 7800X3DのCPU温度とCPUクロック
最後に空冷CPUクーラーのサイズ MUGEN6 Black Edtionを使用して、CPU温度とCPUクロックを確認します。
ストレステストにはこちらも「Cinebench R23:10 minutes」を使用し、計測ソフトの「HWiNFO」で情報を取得します。
CPU温度はおおむね80℃弱、CPUクロックは約4,800MHzでほぼフラットに推移しています。空冷CPUクーラーでも冷却性能は不足していません。わざわざ簡易水冷CPUクーラーを別途用意する必要はなさそうです。
Ryzen 7 7800X3Dの強みと弱み
強み | 弱み |
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最強クラスのゲーム性能 省電力性能が高い 空冷CPUクーラーでも冷却可能 コスパが高い A620など安価なマザーボードでも運用可能 クリエイティブ性能はそこそこ優秀 | 3D V-Cacheテクノロジーが効きづらいゲームタイトルではゲーム性能は伸びづらい 3D V-Cacheテクノロジーはゲーム以外の用途では役に立たない リテールクーラーが付属しない |
Ryzen 7 7800X3Dを探してみる
Ryzen 7 7800X3D搭載おすすめゲーミングPC
2024年8月12日(月)に更新しました。
まとめ
Ryzen 7 7800X3Dを実際検証してみたところ、やはりゲーム性能は最強クラスだと改めて実感しました。
Fortniteなど、3D V-Cacheテクノロジーが効きやすいゲームタイトルであれば、爆発的にfpsが伸びます。
今回の検証ではGPU依存度が高い最高設定でゲームをプレーしましたが、グラフィック設定を下げた場合、さらにfpsは伸びると思います。
省電力性能も高く、さらにCPU温度も低いので、扱いやすさも抜群です。
ゲーム目的では、例えばCore i7-14700などの競合となりうる、インテルのCPUをあえて選ぶ必要性はないと感じました。
ハイエンド級のグラボを使用するのであれば、Ryzen 7 7800X3D一択と言っていいでしょう。
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