2021年のインテル第12世代の登場により、本格的にDDR5メモリへの移行が進みました。
初期はJEDEC準拠で4,800MHzが基準となっていましたが、今では8,000MHzクラスという超高クロックに対応するオーバークロックメモリが登場するようになりました。
今回は最大8000MT/秒という超高速OCメモリ、「Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリ」(型番: KF580C38RSAK2-32)をKingstonより提供していただいので、レビューしていきたいと思います。
Kingstonではメモリ速度単位を「MHz」ではなく「MT/s」と表記していますが、基本的に同じ意味です。
Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリの仕様
型番:KF580C38RWAK2-32 | |
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フォームファクター | UDIMM |
Intel® XMP 3.0 認定 | 可 |
AMD EXPO™ 認定 | 不可 |
速度 | 4800、7200、7600、8000 |
CASレイテンシ | CL38 |
電圧 | 1.45V JEDEC準拠品 (XMP3.0搭載) |
容量 | 32GB(16GB×2枚) |
シングルモジュール | 可 |
デュアルチャネルキット | 可 |
クアッドチャネルキット | 不可 |
オクタルチャンネルキット | 不可 |
高さ | 44mm |
保証 | 製品寿命期間 / 無料技術サポート |
Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリの外観をチェック
「Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリ」のパッケージです。今回はホワイトモデルということで、本体にあわせてパッケージもホワイト色が目立っています。
裏面には主にRGB LEDイルミネーション機能について記載されています。
パッケージから本体を取り出すと、プラスチック製のブリスターケースできちんと保護されていました。
斬新なデザインなシルバーのアルミヒートスプレッダーを標準装備。
メモリの中央部分には「KINGSTON FURY」のロゴが配置されています。
メモリの上面にはアドレサブルRGB LEDに対応したLEDバーを備えています。
実測で高さは約44mm、厚さは約8mmです。高さはそれなりにあるので、大型の空冷CPUクーラーを使う際は、クリアランスが確保できるかどうか前もって確認しておくことをおすすめします。
Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリのLEDライティングをチェック
「Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリ」のLEDライティングの制御は、「Kingston FURY CTRL」または各マザーボードメーカーのRGBソフトウェア(ASUSの場合、Armoury Crate)から設定できます。
赤外線同期テクノロジーの「Kingston FURY Infrared Sync Technology」を搭載。これにより、ソフトウェアで制御していなくても、各メモリが赤外線通信をすることで、LEDライティングが完璧に同期します。
Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリのパフォーマンスをチェック
検証環境について
「Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリ」をPCに組み込んで、DDR5-4800からDDR5-8000にオーバークロックしたことによって、パフォーマンスがどう変化していくのか検証していきたいと思います。
テスト用のCPUはインテル第14世代のCore i5-14600KFを使用。
今回、マザーボードはASUSより、インテルZ790チップセット搭載のASUS 「ROG MAXIMUS Z790 APEX ENCORE」をお借りすることができたのでそれを使用します。
「ROG MAXIMUS Z790 APEX ENCORE」はメモリスロットが2本(※DDR5メモリは4本差しでのオーバークロックが難しい)、メモリを冷却するファンキット付属等の特徴を持った、オーバークロックに特化したマザーボードです。今回の検証にうってつけです。
メモリの設定はDDR5-8000とDDR5-4800の2種類でパフォーマンスを計測します。
テスト環境 | |
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CPU | インテル 「Core i5-14600KF」 |
CPUクーラー | ASUS「ROG RYUJIN III 360 ARGB」 |
マザーボード | ASUS「ROG MAXIMUS Z790 APEX ENCORE」 |
メモリ | Kingston 「FURY Renegade DDR5 RGB メモリ(型番:KF580C38RSAK2-32)」 (DDR5-8000) |
グラフィックスカード | GAINWARD「GeForce RTX 4070 Ghost」 |
SSD | Kingston「NV2 SSD 2TB」 |
電源ユニット | Corsair「RM750e」 |
PCケース | XPG「VALOR AIR」 |
OS | Windows 11 Home 64bit版 |
メモリチップはSK hynix製で、メモリプロファイルはIntel XMP 3.0に対応。メモリプロファイルはDDR5-4800、DDR5-7200、DDR5-7600、DDR5-8000の4つです。
ASUSのマザーボードの場合、メモリプロファイルを読み込むには、UEFI BIOS Utilityを起動し、Extreme Tweakerメニューに移動し、Ai OverClock Tunerからメモリプロファイルを選択します。
ASUSのマザーボードにはASUSによって最適化されたメモリプロファイルを読み込む「XMP I」、XMPメモリーのデフォルトのメモリプロファイルを読み込む「XMP II」の2種類があります。
今回は「XMP II」のメモリプロファイルを読み込むだけで、DDR5-8000で動作しました。また、メモリプロファイルを何も読み込まなければ、JEDEC準拠のDDR5-4800で動作します。
いずれもメモリコントローラがメモリの2分の1倍速になる動作モード(1:2)になる、 gear2で動作します。
ベンチマークテスト:AIDA64
多機能ベンチマークツール「AIDA64」でメモリ帯域とレイテンシを計測します。
DDR5-4800と比較すると、「メモリリード」は約46%、「メモリライト」は約35%、「メモリコピー」は約38%速度が向上しています。
また「メモリレイテンシ」は約33%向上しています。
ベンチマークテスト:Sandra 20/21
多機能ベンチマークツール「Sandra 20/21」でもメモリ帯域とレイテンシを計測します。
DDR5-4800と比較すると、「総合的なメモリパフォーマンス」、「整数メモリ帯域」、「浮動小数点メモリ帯域」ともに、約31%速度が向上しています。
また「メモリレイテンシ」は約29%向上しています。
ベンチマークテスト:CINEBENCH
CPU性能を計測するレンダリングベンチマーク、CINEBENCHです。「R15」、「R20」、「R23」、「2024」の4種類のベンチマークで計測します。
DDR5-4800と比較すると、「2024」ではマルチスコアで約3%、シングルスコアで約2%スコアが向上していますが、「R15」、「R20」、「R23」ではほとんど差がついていません。
ベンチマークテスト:V-Ray 5.0.2 Benchmark
「V-Ray 5」ベースのレンダリングベンチマーク「V-Ray 5.0.2 Benchmark」です。
DDR5-4800と比較すると、約6%スコアが向上しています。
ベンチマークテスト:Blender Benchmark 3.6.0
3DCGソフトの「Blender」ベースのレンダリングベンチマーク「Blender Benchmark 3.6.0」です。
DDR5-4800と比較すると、「monster」は約3%、「junkshop」は約6%、「classroom」は約4%スコアが向上しています。
ベンチマークテスト:7-Zip
圧縮・解凍ソフト「7-Zip」の内蔵ベンチマークです。
DDR5-4800と比較すると、「圧縮」は約17%、「展開」は約2%スコアが向上しています。
ベンチマークテスト:PCMark 10 Extended
総合ベンチマーク「PCMark 10 Extended」の結果です。
DDR5-4800と比較すると、「総合スコア」は約2%、「Essentials」は約1%、「Productivity」は約4%、「Digital Content Creation」は約1%、「Essentials」は約1%スコアが向上しています。
ベンチマークテスト:Super PI
円周率計算ベンチマークの「Super PI」です。プリセットは32Mに設定しています。
DDR5-4800と比較すると、約3%短縮しています。
ベンチマークテスト:x264 FHD Benchmark
動画エンコード性能を測定する「x264 FHD Benchmark」です。
DDR5-4800と比較すると、約3%fpsが向上しています。
ベンチマークテスト:AviUtl
フリーの動画編集ソフト「AviUtl」を使い、エンコードにかかった時間を計測します。動画ファイルは2GBの容量です。
DDR5-4800と比較すると、「x264」形式は約9%、「x265」形式は約6%短縮しています。
ベンチマークテスト:3DMark
3Dグラフィックスの定番ベンチマーク「3DMark」です。
プリセットは「Fire Strike」、「Fire Strike Extreme」、「Fire Strike Ultra」、「Time Spy」、「Time Spy Extreme」の5つを使用します。
DDR5-4800と比較すると、「Fire Strike」は約3%、「Fire Strike Ultra」は約1%スコアが向上しますが、「Fire Strike Ultra」、「Time Spy」、「Time Spy Extreme」では差はほとんどついていません。
ベンチマークテスト:ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ
「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」のベンチマークです。グラフィックス設定は「最⾼品質」で、解像度はフルHD、WQHD、4Kの3種類で計測しています。
まず総合スコアです。
DDR5-4800と比較すると、フルHDでは約8%、WQHDでは約7%スコアが向上していますが、4Kでは差はほとんどついていません。
続いて平均fpsです。
DDR5-4800と比較すると、フルHDでは約6%、WQHDでは約5%fpsが向上していますが、4Kではほとんど差がついていません。
ベンチマークテスト:FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」のベンチマークです。グラフィックス品質は「⾼品質」で、解像度はフルHD、WQHD、4Kの3種類で計測します。
DDR5-4800と比較すると、フルHDでは約1%、WQHDでは約3%スコアが向上していますが、4Kではほとんど差がついていません。
ベンチマークテスト:BLUE PROTOCOL
「BLUE PROTOCOL」のベンチマークです。グラフィックス設定は「最⾼画質」で、解像度はフルHD、WQHD、4Kの3種類で計測しています。
まず総合スコアです。
DDR5-4800と比較すると、フルHDでは約3%向上しましたが、WQHD、4Kではほとんど差がついていません。
続いて平均fpsです。
DDR5-4800と比較すると、フルHDでは約2%、WQHDでは約1%fpsが向上していますが、4Kではほとんど差がついていません。
ベンチマークテスト:Call of Duty: Modern Warfare III
「Call of Duty: Modern Warfare III」のベンチマークの結果を確認します。グラフィックス品質は「極限」で、解像度はフルHD、WQHD、4Kの3種類で計測します。
DDR5-4800と比較すると、フルHDでは約12%、WQHDでは約16%、4Kでは約21%fpsが向上しています。
ベンチマークテスト:Rainbow Six Siege
「Call of Duty: Modern Warfare III」のベンチマークの結果を確認します。グラフィックス品質は「極限」で、解像度はフルHD、WQHD、4Kの3種類で計測します。
DDR5-4800と比較すると、すべての解像度でほとんど差がついていませんが、フルHE、WQHDではDDR5-8000のほうがパフォーマンスは上でした。
Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリの温度をチェック
10分間放置した時のアイドル時と、高負荷時(「OCCT」のメモリの「スタビリティテスト」を10分間実行)の「Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリ」の温度を計測します。
なおメモリの温度計測には「HWiNFO v7.66」を使用します。
アイドル時は緩やかに温度が上昇し、40℃台前半で推移します。一方高負荷時は温度が右肩上がりに上昇し、60℃前後で推移します。
メモリに装着されているアルミヒートスプレッダーによってきちんと冷却されていることを確認しました。
安定性について
最後に安定性について話したいと思います。
今回、DDR5-8000に設定して検証してきましたが、強烈な負荷をかけたり、一部のテストではエラー落ちしてしまうなど、安定性に少し欠ける印象を持ちました。例えば、円周率計算のベンチマーク、y-cruncherを実行すると確実にエラーが起きます。
またメモリの安定性検証ベンチマークのRAM Testを実行したところ、カバー率181%でエラーが起きてしまいました。
DDR5-7600に設定したところ、y-cruncherも問題なく実行できましたし、RAM Testもカバー率5000%を超えてもエラーは何一つ起きなかったです。
Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリには、DDR5-8000だけでなく、DDR5-7600、DDR5-7200のプロファイルがあるので、安定性を重視するのであれば、それらを読み込んで運用することも可能です。
まとめ
DDR5-8000は、JEDEC準拠のDDR-4800と比べると、動作クロックは約1.6倍向上しています。それもあってか、今回試したすべてのベンチマークでパフォーマンスが向上しています。
特に円周率計算や動画エンコードなど、メモリの動作クロックが影響するアプリではパフォーマンスの向上をより実感しやすいです。
また、ゲームパフォーマンスもゲームタイトルによっては、DDR5-4800と比較すると平均fpsが10近く伸びています。
CPUやグラフィックスカードだけでなく、さらなるパフォーマンス向上のため、Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリのようなOCメモリを試してみる価値はあると今回の検証を通じて実感しました。
最後に注意点です。
最高8,000MHzの高クロックメモリを動かせるかどうかはCPUやマザーボードといったその他の要因も関係します。
例えば、自分は最初、インテル第12世代のCore i7-12700で検証を始めましたが、DDR5-8000、DDR5-7600では動作せず、DDR5-7200では動作はしますが、途中でパソコンが落ちてしまうということがあり、検証がスムーズに行えませんでした。
インテル第14世代のCore i5-14600KFに交換したところ、あっさりDDR5-8000で動作したので、OCメモリをうごかせるかどうかはCPUも関係していると思います。
また、マザーボードも重要です。
そもそもマザーボードがDDR5-8000に対応していることが大前提となりますし、仮に対応したとしても、その速度で動作できるかはまた別問題です。
そこでおすすめしたいのが、オーバークロック特化のマザーボードです。
今回検証で使用したASUS 「ROG MAXIMUS Z790 APEX ENCORE」もオーバークロック特化のマザーボードです。
最高8,000MHzの超高クロックメモリで動かしやすいように、メモリスロットが2本、メモリファンキットが付属など、あらかじめメモリのオーバークロックに耐えられるように設計されています。
もし、「Kingston FURY Renegade DDR5 RGB メモリ」を使うのであれば、マザーボードのASUS 「ROG MAXIMUS Z790 APEX ENCORE」も一つの候補としておすすめします。
動画バージョンはこちら↓。