Intel Arc B580の性能を解説!

Intel Arc B580(以下Arc B580)は、新世代のGPUで、前世代のAシリーズからアーキテクチャーを刷新した「Intel Arc Bシリーズ」の最初のモデルとなります。
RTX 4060などのいわゆるエントリー~ミドルクラス帯のGPUで、比較的買いやすい価格に設定されています。
他のエントリー~ミドルクラス帯のGPUと異なり、VRAMを12GB搭載していることもあり、ターゲット解像度はWQHDになります。
Xe2アーキテクチャを採用しているので、新たなフレーム生成技術の「XeSS FG」に対応しているので、対応ゲームであれば、高パフォーマンスが期待できます。
今回の記事ではArc B580の特徴、ゲーム性能を解説します。
Arc B580の仕様
Arc B 580 | RTX 4060 | RTX 4060 Ti | |
---|---|---|---|
GPUアーキテクチャー | Xe2 | Ada Lovelace | Ada Lovelace |
シェーダープロセッサ | 160基 | 3,072基 | 4352基 |
ベース/ブーストクロック | 2,670MHz / 2,850MHz | 1,830MHz / 2,535MHz | 2,310MHz / 2,535MHz |
VRAM容量 | 12GB(GDDR6) | 8GB(GDDR6) | 8GB(GDDR6) |
L2キャッシュ容量 | 18MB | 24MB | 32MB |
メモリクロック | 19GHz | 17GHz | 18GHz |
メモリバス幅 | 192bit | 128bit | 128bit |
メモリバス帯域 | 456GB/s | 288GB/s | 288GB/s |
PCI-Express | PCIe 4.0 x8 | PCIe 4.0 x8 | PCIe 4.0 x8 |
グラフィックスカード電力 | 190W | 115W | 160W |
Intel Arc B580は、競合となるRTX 4060、RTX 4060 Tiと比較すると、特にVRAM容量、メモリバス幅、メモリ帯域において上回っている点が大きく目立っています。
特にVRAM容量は、RTX 4060、RTX 4060 Tiが8GBなのに対して、Intel Arc B580は12GBを搭載しています。
昨今のゲームはフルHDでも、VRAMを8GB以上消費するので、VRAM12GBのIntel Arc B580には優位性があります。
またメモリバス幅もRTX 4060、RTX 4060 Tiよりも広いので、高負荷なゲームでのパフォーマンスも期待できます。
他のエントリー~ミドルクラス帯のGPUと比べると、Intel Arc B580のスペックは際立っています。
Arc B580の主な特徴
XeSS FGに対応

XeSS FGは、DLSS FGやFSR 3と同じAIを利用したフレーム生成技術のことです。
今までIntel Arcでは、フレーム生成を有効にするためにはFSRを利用する必要がありました。XeSS FGを利用することで、アップスケーリングにXeSSを設定したときでも、フレーム生成を有効にできるので汎用性は高まります。
ただし、XeSS FGはゲーム側で対応が必要です。現時点では対応ゲームは非常に少なく、普及にはまだまだ時間がかかりそうです。

例外として、ゴーストオブツシマはXeSSとFSR 3を併用できます。
VRAM搭載量は12GB


昨今のゲームのVRAM消費量は凄まじいものがあります。例えば、モンスターハンターワイルズではウルトラ設定のフルHDでもVRAM消費量が8GBを超えます。
実際、VRAMが8GBのRTX 4060、RTX 4060 Ti、RX 7600でウルトラ設定にすると、上記の画像のような警告メッセージが表示されます。
一方、Intel Arc B580のVRAMは12GBです。このVRAM12GBは、フルHD解像度であれば十分余裕がある容量で、実際、モンスターハンターワイルズでウルトラ設定にしても警告メッセージは一切表示されません。
このVRAM12GB搭載というのはIntel Arc B580の最大の強みといえます。
検証に使用したArc B580のモデル


検証で使用したのは、Asrockの「Intel Arc B580 Challenger 12GB OC」です。


ファンを2基搭載する、デュアルファン仕様となっています。デザインがメカメカしくて割と好みです。カード長は249mmとなっているので、大抵のPCケースに収まるかと思います。


背面は金属製のバックプレートが装着されています。CHALLENGERの文字が装飾されています。


ヒートシンクの厚みはそこまでありません。


上面にもロゴなどの装飾があります。補助電源は8pin×1です。


LEDに対応しており、光らせることが可能です。LEDスイッチでオフにすることも可能です。


外部出力端子はDisplayPort2.1 x3、HDMI2.1a x1です。2スロット厚です。


検証環境


CPUはRyzen 7 7800X3Dを使用します。
3D V-Cacheテクノロジーを採用しているので、ゲーム性能で重要なL3キャッシュを96MBも搭載しています。グラボの性能を最大限引き出すことが可能です。
製品名 | |
---|---|
マザーボード | ASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI レビュー記事 |
CPU | Ryzen 7 7800X3D |
CPUクーラー | PCCOOLER GAME ICE K4 レビュー記事 |
メモリ | 16GB×2 DDR5-4800 |
システム用SSD | WD_BLACK SN770 NVMe レビュー記事 |
アプリケーション用SSD | Kingston NV2 レビュー記事 |
電源 | MSI MAG A850GL PCIE5 |
PCケース | 長尾製作所 SMZ-2WBT-ATX レビュー記事 |
OS | Windows 11 HOME(24H2) |
電源プラン | バランス |


競合となる、RTX 4060、RTX 4060 Ti、RX 7600を比較対象とします。
Arc B580のゲーム性能を検証
3DMark


3D Markのラスタライズ系のベンチマークです。
Arc B580のスコアはRTX 4060、RX 7600に対して、すべてのテストにおいて上回っています。
RTX 4060 Tiに対しても、Steel Nomad Light以外のテストで上回っています。
ラスタライズ系のベンチマークでは、Arc B580は非常に優秀なスコアを残しています。


続いてレイトレーシング系のベンチマークです。
Arc B580のスコアはPort RoyalではRTX 4060 Ti、Speed WayではRTX 4060とほぼ互角です。
レイトレーシング系のテストで強いRTX勢と比較してもほぼ互角のスコアを残しているので、Arc B580はレイトレーシング系のベンチマークでも十分検討していると言えます。
ARMORED CORE VI


・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
※ミッション武装採掘艦護衛で計測


続いて、実ゲームの検証です。まず「ARMORED CORE VI」です。
RX 7600の平均フレームレートは、フルHDではRTX 4060 Tiを若干下回りますが、RTX 4060、RX 7600に対しては上回っています。
WQHDになると、Arc B580がRTX 4060 Tiを若干上回り、さらに4Kになると大きく差をつけて上回ります。
Assassin’s Creed Mirage


・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
※ベンチマークモードで計測


「Assassin’s Creed Mirage」です。
Arc B580の平均フレームレートは、フルHD、WQHDでは、RTX 4060 Ti、RTX 4060を下回りますが、4Kでは逆に上回ります。
RX 7600に対してはすべての解像度において上回っています。
Call of Duty: Modern Warfare III


・画質:極限
・解像度:1,920×1,080ドット、、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS/FSR/XeSSクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測


「Call of Duty: Modern Warfare III」です。
Arc B580の平均フレームレートは、すべての解像度においてRTX 4060、RTX 4060 Tiを下回っています。
RX 7600に対しても、フルHD、WQHDでは下回り、4Kで互角となりました。
最適化がうまくいっていないせいなのか、Arc B580の性能はイマイチ引き出されていない印象です。
Far Cry 6


・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:FSRクオリティ
※ベンチマークモードで計測


「Far Cry 6」です。
Arc B580の平均フレームレートは、すべての解像度において、RTX 4060 Tiを下回ります。
RTX 4060に対しては、フルHD、WQHDでは下回り、4Kで互角になりました。
RX 7600に対しては、フルHD、WQHDでは下回り、4Kで上回ります。
Fortnite


・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS/XeSSクオリティ
※ベンチマークモードで計測


「Fortnite」です。
Arc B580の平均フレームレートは、RTX 4060 Tiに対してはフルHD、WQHDでは下回りますが、4Kでは上回ります。
RTX 4060、RX 7600に対しては、すべての解像度で上回ります。
Ghost of Tsushima


・画質:非常に高い
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※貴市の集落から豆酘平原に至る道を馬で1分間駆け抜けてるときのフレームレートを計測


「Ghost of Tsushima」です。
Arc B580の平均フレームレートは、RTX 4060、RTX 4060 Tiに対してはすべての解像度で上回ります。
RX 7600に対しては、フルHD、WQHDでは下回りますが、4Kでは大差をつけて上回ります。
Monster Hunter Wilds


・画質:ウルトラ
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※チャタカブラ戦で1分間戦闘しているときのフレームレートを計測


「Monster Hunter Wilds」です。
Arc B580の平均フレームレートは、フルHDではRTX 4060とほぼ互角ですが、RTX 4060 Ti、RX 7600に対しては下回っています。
一方、WQHD、4KではRTX 4060、RTX 4060 Ti、RX 7600を上回っています。
Tom Clancy’s Rainbow Six Siege


・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・スケーリング:100%
※ベンチマークモードで計測


「Tom Clancy’s Rainbow Six Siege」です。
Arc B580の平均フレームレートは、フルHD、WQHDではRTX 4060 Tiを下回っていますが、RTX 4060、RX 7600に対しては上回っています。
一方、4KではRTX 4060、RTX 4060 Ti、RX 7600を上回っています。
Cyberpunk 2077


・画質:ウルトラ
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測


「Cyberpunk 2077」です。
Arc B580の平均フレームレートは、すべての解像度において、RTX 4060、RTX 4060 Ti、RX 7600を上回っています。
黒神話:悟空


・画質:最高
・解像度:1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドット
・アップスケーリング:DLSS/FSRクオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークソフトで計測


「黒神話:悟空」です。
Arc B580の平均フレームレートは、フルHD、WQHDではRTX 4060を上回っていますが、RTX 4060 Ti、RX 7600に対しては下回っています。
4KではRTX 4060、RX 7600を上回っていますが、RTX 4060 Tiに対しては下回っています。
Arc B580のクリエイティブ性能を検証
PCMark 10 Extended


PCMark 10 Extendedです。
全体的にスコアは他のGPUと比較して若干劣っている印象ですが、画像処理などの性能を計測するDigital Content Creationにおいては、Intel Arc B580は優秀なスコアを残しています。
HandBrake


HandBrakeです。4Kソースの動画を変換する速度を計測しました。
この中ではエンコード処理で最も速かったのはQSVが使えるIntel Arc B580が断トツで早かったです。他のGPUを全く寄せ付けない爆速エンコードです。
Blender benchmark


Blender benchmarkです。
総合スコアを比較すると、特にRTX勢とは大きな差をつけられて下回っています。
BlenderはCUDAが使えるRTX勢に有利なベンチマークとなっています。
CUDAが使えないArc B580には厳しい結果となりました。
Arc B580の消費電力を検証


グラボ単体ではなく、システム全体の消費電力を見ていきます。アイドルは最小消費電力を、各ゲームは最大消費電力を取得しています。
ワットチェッカーはラトックシステムの「RS-BTWATCH2」を使用します。
Arc B580の消費電力はRTX 4060、RTX 4060 Tiと比べるとかなり高めとなっています。L2キャッシュで性能を補い、CUDAコア数などを控えめにしたRTX 4060、RTX 4060 Tiの省電力性が目立ちます。
ただし、Arc B580のシステム全体の最大消費電力で300Wを超えることがなく、ワットパフォーマンスは十分優秀と言えます。
Arc B580の性能まとめ
- ゲーム性能は全体的にRTX 4060、RX 7600より優秀
- ゲーム性能はフルHDではRTX 4060 Tiを下回るが高解像度では上回る
- Call of Duty: Modern Warfare IIIなど、相性の悪いゲームだとパフォーマンスはイマイチ
- ターゲット解像度はフルHD、WQHD
- VRAM12GBのおかげである程度余裕をもってゲームをプレーできる
- レイトレーシング系には弱い
- 現状、XeSS FG対応ゲームが少ない
- エンコード速度が非常に高速
- 消費電力はRTX 4060 Tiより高いが、システム全体では300Wを超えることがなく、十分省電力といえる
Arc B580のゲーム性能は、全体的にみてRTX 4060、RX 7600を上回ります。
RTX 4060 Tiに対しては流石にフルHDでは下回りますが、WQHDなどの高解像度では逆転する傾向があります。
やはり、Arc B580のVRAM12GBはWQHDなどの高解像度において、有利に働きます。
一方で、Call of Duty: Modern Warfare IIIのように相性の悪いゲームだと、RTX 4060、RX 7600を下回ります。
また、XeSS FG対応ゲームが少なく、ほとんどのゲームではフレーム生成を有効にするために、FSRを使う羽目になる点もマイナスです。
ただ、今後ドライバの最適化が進み、XeSS FG対応ゲームが多くなっていけば、Arc B580の魅力度はさらに高くなります。
RTX 4060、RTX 4060 Tiが高騰していることもあり、個人的に、エントリー~ミドル帯のGPUではArc B580を一番おすすめします。
Arc B580と組み合わせるCPUについて


さすがにRyzen 7 7800X3Dなどのハイエンド帯のCPUは正直Arc B580との組み合わせにおいては力を持て余している印象があります。
最もおすすめなのは「Core i5-14400F」あたりのインテル製CPUです。
CPU単体の価格が低価格にも関わらず、Arc B580の性能を効率よく引き出します。
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