Ryzen 7 9800X3D/Ryzen 7 7800X3D&RX 9070 XTのゲーム性能をベンチマーク

本記事では、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」と「RX 9070 XT」の構成で、「ゲーム性能」、「クリエイティブ性能」、「消費電力」を検証します。
「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」と「RX 9070 XT」の構成の自作PCやゲーミングPCの購入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
CPUの性能を比較
仕様を簡単に比較

Ryzen 7 9800X3D | Ryzen 7 7800X3D | Ryzen 7 9700X | Core Ultra 7 265F | Core i7 -14700F | |
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CPU世代 | Zen 5 | Zen 4 | Zen 5 | Core Ultra 200S | 第14世代Intel Coreプロセッサ |
ソケット | AM5 | AM5 | AM5 | LGA1851 | LGA1700 |
コア数 | 8 | 8 | 8 | 20(P8+E12) | 20(P8+E12) |
スレッド数 | 16 | 16 | 16 | 20 | 28 |
ベースクロック | 4.7GHz | 4.2GHz | 3.8GHz | 2.4GHz | 2.1GHz |
ブーストクロック | 5.2GHz | 5.0GHz | 5.5GHz | 5.3GHz | 5.4GHz |
L3キャッシュ | 96MB | 96MB | 32MB | 30MB | 33MB |
TDP | 120W | 120W | 65W(105W) | 65W | 65W |
参考価格 ※2025年6月24日 | 77,980円 | 59,952円 | 46,980円 | 47,979円 | 46,480円 |
「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」は、3D V-Cache技術により、大容量のL3キャッシュを搭載することを可能にしています。
ゲームが頻繁に必要とする大量のデータを、より長く、より多くキャッシュ内に保持することが可能になります。
これによって、CPUがメインメモリにアクセスする回数が劇的に減り、ゲームの処理をより効率的に行えるようになります。
「Ryzen 7 9700X」はZen 5なので、Ryzen 7 9800X3Dと同じく、最新のCPUです。ただし、L3キャッシュは32MBと少なく、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」と比較して、明確な差があります。
なお、「Ryzen 7 9700X」には105Wモードという性能を引き上げるモードがありますが、ゲームのフレームレートにはほとんど変化はありません。
「Core Ultra 7 265F」、「Core i7 -14700」はRyzenとは違ってEコア(高効率コア)を搭載しているのが大きな特徴です。これによって、コア数、スレッド数はRyzenを圧倒しています。
ただし、Eコアはゲーム性能にあまり寄与しておらず、コア数、スレッド数が多いからといってゲーム性能が高いというわけではないので、その点は注意が必要です。
「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」の違いについて

「Ryzen 7 9800X3D」はCPU世代がZEN5に更新したことにより、IPC(サイクルあたりの命令実行数)が最大16%向上。さらに、3D V-Cache技術も第2世代に更新し、従来チップの上に配置していたキャッシュを下に配置する方式に変更されました。
これによって、発熱の大きいチップとヒートスプレッダが直接触れるようになり冷却効率がアップし、動作クロックが上げにくなった前世代の弱点が克服されました。
実際、「Ryzen 7 7800X3D」と比べると、ベースクロック、ブーストクロックともに上昇しています。


CPUの処理性能を比較

CPUの処理性能を計測する「CINEBENCH 2024」です。
オーバークロックや電源力制限の解除はおこなわず、BTOパソコンと同じ定格でベンチマークをしています。
マルチ性能を見ると、「Core Ultra 7 265F」が他のCPUを圧倒しています。ただし、「Core Ultra 7 265F」のシングル性能は「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 9700X」とほぼ互角で突出してスコアが高いわけではありません。
一方、「Ryzen 7 9800X3D」の場合、「Core Ultra 7 265F」と比較して、マルチ性能では負けていますが、シングル性能はほぼ互角です。
さらに前世代の「Ryzen 7 7800X3D」と比較して、マルチ性能、シングル性能ともに大幅にパワーアップしています。

CINEBENCH 2024はあくまでも純粋にCPUの処理性能を計測するものです。このテストのスコアが高い=ゲーム性能が高いとは言えないので、あくまでも参考程度に見てください。
検証PCのスペック


Ryzen 7 9800X3D/Ryzen 7 7800X3D/Ryzen 7 9700X | Core Ultra 7 265F | Core i7-14700F | |
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マザーボード | ASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI レビュー記事 | BIOSTAR Z890AX-E PRO | B760 AORUS ELITE (rev. 1.0) |
CPUクーラー | CPS RT400-BK レビュー記事 | ||
メモリ | 32GB(16GB×2) DDR5-4800 | ||
ストレージ | Kingston NV3 PCIe 4.0 NVMe SSD(2TB) レビュー記事 | ||
電源 | MSI MAG A850GL PCIE5 | ||
PCケース | 長尾製作所 SMZ-2WBT-ATX レビュー記事 | VALOR AIR レビュー記事 |
BTOによく採用されている同レベルのグレードのパーツを採用しています。いわゆるハイエンドのパーツはほとんど使用していません。
例えば、CPUクーラーはBTOでもよく採用されている空冷の「CPS RT400-BK」を使用しています。
なおPBOや電力無制限などは一切使わず、またGPUのオーバークロックも使用していません。すべて標準設定のままです。いわゆるBTOパソコンと同じ状態だと思っていいです。


検証に使用するグラボは玄人志向の「RD-RX9070XT-E16GB/TP」です。


ゲーム性能を比較
フルHD、WQHD、4Kと各解像度ごとにベンチマークを実行し、平均フレームレートを計測します。基本的にグラフィックの設定は最上級のものに設定します。
ベンチマークに使用したゲームは下記の通りです。
- Assassin’s Creed Shadows
- Cyberpunk 2077
- FFXIV: 黄金のレガシー
- Forza Horizon 5
- Marvel Rivals
- Monster Hunter Wilds
- Skull and Bones
- Stellar Blade
- Tom Clancy’s Rainbow Six Siege X
- 黒神話:悟空



すべて自分の現時点での環境下での実測値です。ゲームのバージョン、ドライバ、BIOSなどの環境によって、フレームレートは変動します。
Assassin’s Creed Shadows


・画質:最高
・レイトレーシング:全体的に拡散+反射
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSR4クオリティ
・フレーム生成:有効
※ベンチマークモードで計測


3D V-Cache技術との相性が悪く、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」のフレームレートは伸び悩んでいます。
このゲームはインテル製のCPUとの相性が良く、相性の悪いRyzenはゲーム性能は伸びづらいです。
Cyberpunk 2077


・画質:ウルトラ
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSR 3クオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測


3D V-Cache技術との相性が抜群に良く、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」のフレームレートは大きく伸びています。
フルHDの平均フレームレートでは「Ryzen 7 9800X3D」と「Core Ultra 7 265F」との間に110くらいの差があり、同じRX 9070 XTを使ってるとは思えないほどの差が広がっています。
一方、4KではGPU負荷が高いせいか、CPUによる違いは見られなかったです。
FFXIV: 黄金のレガシー


・画質:最高
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSR
・解像度スケール:67%(クオリティ相当)
・フレームレートしきい値:常に適用
※ベンチマークソフトで計測


3D V-Cache技術との相性が抜群に良く、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」のフレームレートは大きく伸びています。
フルHDの平均フレームレートでは「Ryzen 7 9800X3D」と「Core Ultra 7 265F」との間に100くらいの差があり、同じRX 9070 XTを使ってるとは思えないほどの差が広がっています。
GPU負荷の高い4Kでも、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」は他のCPUに比べて10以上の差をつけています。
Forza Horizon 5


・画質:エクストリーム
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSRクオリティ
※ベンチマークモードで計測


このゲームはRyzenとの相性が良く、インテル製CPUとの相性が悪いです。
ただ、3D V-Cache技術の効果はあまりなく、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」の強みは発揮されづらいです。
Marvel Rivals


・画質:エクストリーム
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSR4クオリティ
※ベンチマークモードで計測


3D V-Cache技術との相性が抜群に良く、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」のフレームレートは大きく伸びています。
特にフルHDでは、「Ryzen 7 9800X3D」の平均フレームレートは「Ryzen 7 7800X3D」より40ほど高いです。
3D V-Cache技術がないCPUは全体的に伸び悩んでいます。
Monster Hunter Wilds


・画質:ウルトラ
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSR4クオリティ
・フレーム生成:オン
※ベンチマークモードで計測


3D V-Cache技術との相性が抜群に良く、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」のフレームレートは大きく伸びています。
特にフルHDでは、「Ryzen 7 9800X3D」の平均フレームレートは「Ryzen 7 7800X3D」より40ほど高いです。
3D V-Cache技術がないCPUは全体的に伸び悩んでいます。
Skull and Bones


・画質:ウルトラ
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSRクオリティ
・レイトレーシング:オン
※ベンチマークモードで計測


このゲームはRyzenとの相性が良く、インテル製CPUとの相性が悪いです。
特に「Core Ultra 7 265F」との相性が悪く、フレームレートは大きく伸び悩んでいます。
ただ、3D V-Cache技術の効果はあまりなく、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」の強みは発揮されづらいです。
Stellar Blade


・画質:とても高い
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSR3クオリティ
・フレーム生成:オン
※ステージ序盤で1分間走ってフレームレートを計測


3D V-Cache技術との相性が抜群に良く、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」のフレームレートは大きく伸びています。
特にフルHDでは、「Ryzen 7 9800X3D」の平均フレームレートは「Ryzen 7 7800X3D」より40ほど高いです。
3D V-Cache技術がないCPUは全体的に伸び悩んでいます。
Tom Clancy’s Rainbow Six Siege X


・画質:ウルトラ+
・解像度:フルHD、WQHD、4K
※ベンチマークモードで計測


「Ryzen 7 9800X3D」が一番フレームレートが伸びていますが、他のCPUと比較して突出してフレームレートが出ているとは言い難いです。
3D V-Cache技術の効果はあまりなく、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」の強みは発揮されづらいです。
黒神話:悟空


・画質:最高
・解像度:フルHD、WQHD、4K
・アップスケーリング:FSR3
・フレーム生成:オン
・サンプリング解像度:67%(クオリティ相当)
※ベンチマークソフトで計測


「Ryzen 7 9800X3D」が一番フレームレートが伸びていますが、他のCPUと比較して突出してフレームレートが出ているとは言い難いです。
3D V-Cache技術の効果はあまりなく、「Ryzen 7 9800X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」の強みは発揮されづらいです。
各解像度ごとの全10ゲームの平均fpsまとめ


今まで検証した全10ゲームの平均fpsを各解像度ごとにまとめました。
フルHDでは「Ryzen 7 9800X3D」の強さが目立っています。「Ryzen 7 7800X3D」と比べると、約7%の開きがあります。
ただ、WQHDになると、その差は約2%と差が縮まり、4Kでは差がほとんどありません。
「Ryzen 7 9800X3D」は確かにゲーム性能最強ですが、WQHD、4Kをメインでプレーするのであれば、「Ryzen 7 7800X3D」を選ぶ選択肢も十分有りです。
配信・録画中のゲーム性能


FFXIV: 黄金のレガシーベンチマーク(フルHD・最高設定・FSR67%・常に適用)実行し、OBSを用いて、実況(Twitch)・録画中の平均フレームレートを計測します。
配信・録画の設定
映像エンコーダー | AMD HW H.264(AVC) |
---|---|
出力 | 1920×1080 |
フレームレート | 60 |
レート制御 | CBR |
ビットレート | 6000 Kbps |
キーフレーム間隔 | 2s |
プリセット | Quality |
プロファイル | high |
最大Bフレーム | 3 |


配信・録画中でも「Ryzen 7 9800X3D」の強さが際立っています。元々、フレームレートを多く出せるので、録画・配信中で多少フレームレートが落ちても、問題ありません。
一方、「Core Ultra 7 265F」、「Core i7-14700F」はコア数、スレッド数は多いのですが、配信・録画中でもきっちりフレームレートは下落しています。
配信・録画をしながらゲームをプレーするのであれば、「Ryzen 7 9800X3D」が最もふさわしいCPUと言えます。
クリエイティブ性能を比較
PCMark 10


「PCMark 10」です。パソコンの総合性能を計測することができます。
PCの基本性能を測る「Essentials」、オフィスアプリ系の処理性能を測る「Productivity」、写真・動画編集に関する性能を計測する「Digital Content Creation」の3つのテストから構成されています。
今回の検証では「総合スコア」を見ていきます。
「Ryzen 7 9800X3D」の総合スコアーは「Ryzen 7 7800X3D」と比較して、約13%向上し、「Ryzen 7 9700X」とほぼ互角です。
今回検証したCPUの中で最も総合スコアーが高く、このことから「Ryzen 7 9800X3D」はゲーム性能だけでなく、クリエイティブ性能も十分高いと言えます。
AviUtl


フリー動画編集ソフト「Aviutl」を使用して、動画のエンコード速度をテストします。エンコーダーはRADEONのGPUのエンコーダー、「VCEEnc」を使用します。
動画素材は、約10分間のmov形式のもので、VCEEncを使ってエンコードにかかった時間を計測します。
「Ryzen 7 9800X3D」は「Ryzen 7 7800X3D」と比較して、約3秒早く、エンコードを終えました。
今回検証したCPUの中で最もエンコードの処理時間は短く、このことから「Ryzen 7 9800X3D」はゲーム性能だけでなく、動画のエンコード性能も十分高いと言えます。
システム全体の消費電力を比較


4K最高設定のFFXIV: 黄金のレガシーベンチマークを実行中のシステム全体の消費電力を各CPUごとに比較します。
ワッチェッカーは、ラトックシステムの「RS-BTWATTCH2A」を使用します。
「Ryzen 7 9800 X3D」は「Ryzen 7 7800X3D」に比べると消費電力は確実に上がっています。最大値で比較すると、約40Wの差があります。
一方、「Ryzen 7 7800X3D」は、今回検証したCPUの中では最も消費電力が低いです。
ワットパフォーマンス(1Wあたりの性能)は「Ryzen 7 9800 X3D」より「Ryzen 7 7800X3D」のほうが上です。
まとめ


今回の検証で、「RX 9070 XT」と組み合わせるCPUを考えると、「Ryzen 7 9800 X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」が最もおすすめできると確信出来ました。
特に3D V-Cache技術が効くゲームで、フルHDであれば、インテル製のCPUと比較して、平均フレームレートで100くらいの差をつけて上回ります。
「RX 9070 XT」の性能をフルに引き出したいのであれば、「Ryzen 7 9800 X3D」、「Ryzen 7 7800X3D」を選んでおけば、まず後悔しません。
問題は、「Ryzen 7 9800 X3D」と「Ryzen 7 7800X3D」、どちらを選ぶべきかですが、正直WQHD以上であれば、違いはほどんとないと言えます。
フルHDでプレーするのであれば、「Ryzen 7 9800 X3D」、WQHD以上でプレーするのであれば、「Ryzen 7 7800X3D」を選べばいいのではないでしょうか?
「Ryzen 7 7800X3D」は「Ryzen 7 9800 X3D」より価格が安く、おまけに消費電力・発熱も大人しく、扱いやすいメリットもあるので、それらの点に魅力を感じるのであれば、「Ryzen 7 7800X3D」を選んでもいいかもしれません。




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