Core i5-14600Kはインテル第14世代のCoreシリーズのミドルレンジに位置するCPUです。2023年10月に発売されたRaptor Lake-S RefreshシリーズのK付きモデルの中では最も安いCPUです。
Raptor Lake-S Refreshということでインテル第13世代CPUからの性能向上はほとんど望めませんが、Golden Coveという古いCPUアーキテクチャーを採用したインテル第12世代CPUであれば性能向上は期待できそうです。
そこで今回はインテル第12世代CPUのCore i7-12700と比較し、Core i5-14600Kをレビューしたいと思います。
今回の検証では内蔵GPUが省略されたCore i5-14600KFを使用します。
Core i5-14600Kとは
Core i5-13600K | Core i5-14600K | Core i7-12700 | |
開発コードネーム | Raptor Lake-S | Raptor Lake-S Refresh | Alder Lake-S |
CPUアーキテクチャー | Raptor Cove + Gracemont | Raptor Cove + Gracemont | Golden Cove + Gracemont |
製造プロセス | Intel 7 | Intel 7 | Intel 7 |
コア数(Pコア+Eコア) | 14(6+8) | 14(6+8) | 12(8+4) |
スレッド数 | 20 | 20 | 20 |
L2キャッシュ | 20MB | 20MB | 12MB |
L3キャッシュ | 24MB | 24MB | 25MB |
ベースクロック | P=3.5GHz、E=2.6GHz | P=3.5GHz、E=2.6GHz | P=2.10GHz、E=1.60GHz |
ブーストクロック | P=5.1GHz、E=3.9GHz | P=5.3GHz、E=4.0GHz | P=4.80GHz、E=3.60GHz |
内臓GPU | UHD770 | UHD770 | UHD770 |
対応メモリ | DDR5-5600、DDR4-3200 | DDR5-5600、DDR4-3200 | DDR5-4800、DDR4-3200 |
PCI-Express | PCIe 5.0 x16、PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x16、PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x16、PCIe 4.0 x4 |
PBP | 125W | 125W | 65W |
MTP | 181W | 181W | 180W |
対応ソケット | LGA1700 | LGA1700 | LGA1700 |
参考価格 ※2024年2月現在 |
47,979円 | 46,773円 | 48,980円 |
インテル第14世代の開発コード名の「Raptor Lake-S Refresh」を見てわかる通り、Core i5-14600Kは前世代のCore i5-13600Kのマイナーチェンジ版です。ブーストクロックはCore i5-13600Kと比べて約200MHz上がっているだけです。
ただ、インテル第14世代にのみ、ゲーム処理をPコアに集中させ、ゲーム性能を向上させる「APO(Intel Appliacation Performance Optimizer)」にも対応するという強みがあります。
しかし、この機能は後にインテル第12世代、第13世代にも対応予定という話になり、唯一の強みも失ってしまいました。
Core i7-12700と比較すると、最も異なる点がCPUアーキテクチャーです。
Core i7-12700はGolden Cove、Core i5-14600KはRaptor Coveという違いがあります。
「Golden Cove」から「Raptor Cove」となったことで性能向上が期待できます。
これによって、「半導体構造を見直すことでVFカーブ特性が大幅改善」、「2次キャッシュ増量」、「キャッシュアルゴリズムの改善」、「DDR5-5600までの対応」、「Eコアの増量」など様々な点が改善されました。
実際、Core i5-14600KのEコアはCore i5として考えると6基と多く、Core i7-12700の4基を上回っています。
ゲーム性能はキャッシュ量も大きく影響します。
2次キャッシュがCore i7-12700の12MBに対して、Core i5-14600Kは20MBと大幅に増量しています。ゲーム性能に期待が持てます。Core i5-14600KFのパッケージです。濃いブルーのパッケージを採用しています。リテールクーラーは同梱しないので、厚みはないです。
いつもの縦長のデザインを採用。インテル第12世代、第13世代と同じくLGA1700を採用しているので見た目はほぼ同じです。表面はCPUの型番などが刻印され、裏面は微細な抵抗やCPUソケットのピンと接触するための接点がびっしりと埋め込まれています。
「CPU-Z」で仕様を比較。
タスクマネージャーを確認すると、14コア20スレッドCPUとして認識されていました。
テスト環境
検証環境 | |
---|---|
CPU | インテル 「Core i5-14600KF」 |
CPUクーラー | サイズ「MUGEN6 Black Edtion」 |
CPUグリス | ARCTIC 「MX-4」 |
マザーボード | GIGABYTE「B760 AORUS ELITE」 |
メモリ | Kingston 「FURY Renegade DDR5 RGB メモリ(型番:KF580C38RSAK2-32)」(16GB×2) (DDR5-4800に設定) |
SSD | Kingston「NV2 SSD 2TB」 Western Digital「WD_BLACK SN770 NVMe 1TB」 Western Digital「WD Blue SN580 NVMe SSD 1TB」 |
電源ユニット | Corsair「RM750e」 |
PCケース | XPG「VALOR AIR」 |
OS | Windows 11 Home 64bit版 |
マザーボードは、Intel B760マザーボードのGIGABYTE「B760 AORUS ELITE」を使用。12+1+1の電源フェーズを搭載しているので、「Core i5-14600KF」クラスのCPUであれば、問題なく性能を引き出すことができます。
メモリはKingstonの「FURY Renegade DDR5 RGB メモリ(型番:KF580C38RSAK2-32)」(16GB×2)を使用。DDR5-8000に対応するオーバークロックメモリですが、今回の検証ではJEDEC準拠のDDR5-4800に設定しています。
CPUクーラーはサイズの「MUGEN6 BLACK EDITION」を使用。
両CPUともに電力制限は解除しています。実質、電力無制限状態です。
Core i5-14600KのCPU性能を検証:Core i7-12700と比較
レンダリング性能
CPUによるレンダリング性能を計測するにあたって、以下の5つのソフトを使用します。
- CINEBENCH 2024
- CINEBENCH R23
- CINEBENCH R20
- CINEBENCH R15
- Blender 4.4.0
まずはCPUレンダリングを計測する代表的なソフト、「CINEBENCH」からです。
Core i5-14600KのマルチスレッドスコアはCore i7-12700と比較して13%~17%ほど上回っています。シングルスレッド性能も同様に、9%~11%ほど上回っています。
3DCGソフトウェアでおなじみのBlenderのベンチマークソフトです。
monster、junkshop、classroomの3種類のテストから構成されますが、今回はそれら3つのテストの合計値を採用します。
Core i5-14600Kの総合スコアはCore i7-12700と比較して約11%上回っています。
動画エンコード性能
CPUによる動画エンコード性能を計測するにあたって、以下の2つのソフトを使用します。なお、映像ソースには、解像度1920×1080ドット、高設定の「FF15ベンチマーク」を実行した、約5分ほどの動画ファイルを使用しています。
- Handbrake
- Aviutl
フリー動画エンコードソフト「Handbrake」を使用して、動画のエンコード速度をテストします。
Core i5-14600Kのエンコード速度はCore i7-12700と比較してH.264では約13%、H.265では約11%上回っています。
フリー動画編集ソフト「Aviutl」を使用して、動画のエンコード速度をテストします。
Core i5-14600Kのエンコード速度はCore i7-12700と比較して、x264guiExでは約11%、x265guiExでは約13%上回っています。
動画編集性能
フリー動画編集ソフトの「Davinch Resolve」を使用して、動画編集の快適度をテストします。解像度5184×3888ドットの画像にシャープ処理をかけた、50枚のファイルに
ベンチマークには、Puget Systems社が提供しているベンチマークプリセットを使用します。
Core i5-14600Kの総合スコアはCore i7-12700と比較して約11%上回っています。
RAW現像処理性能
RAW現像ソフトの「OM Workspace」を使用して、RAW現像処理性能をテストします。テストでは、オリンパス製のデジタルカメラ「PEN E-P7」で撮影した解像度5184×3888ドットのRAWファイル50枚を現像します。
なお、50枚の写真データにはシャープネス処理をかけて、JPEGファイルとして出力しています。
Core i5-14600Kの処理速度はCore i7-12700と比較して約5%上回っています。
圧縮と解凍
フリー解凍ソフトの「7-Zip」を使用して、ファイルの圧縮と解凍のスピードをテストします。付属のベンチマークツールを使用します。
Core i5-14600Kの圧縮速度はCore i7-12700と比較して約14%、解凍速度は約21%上回っています。
総合ベンチマーク
「PC Mark 10 Extended」を使用して、総合的なパフォーマンスをテストします。今回の検証ではGPUの性能に左右されたくないので、「Use OpenCL」と「Use hardware-accelerated video processing」を無効化しています。
「RUN CUSTOM」となるので総合スコアは表示されず、代わりに「Essensials」、「Productivity」、「Digital Content Creation」の個別スコアを見ていきます。なお、「Gaming」に関しては3DMarkを実行するので、除外しています。
Core i5-14600KのEssentialsはCore i7-12700と比較して約9%、Productivityは約9%、Digital Content Creationは約10%上回っています。
- Essensials:App Start-upとWeb Browsing、Video Conferencingのワークロードから構成され、PCの基本性能を測ります。
- Productivity:WritingとSpreadsheetsのワークロードから構成され、ビジネスアプリケーション性能を測ります。
- Digital Content Creation:Photo EditingとVideo Editing、Rendering and Visualizationのワークロードから構成され、コンテンツ制作における性能を測ります。
Core i5-14600Kは、一般的なベンチマークでは、Core i7-12700を圧倒しています。Core i7-12700に比べてPコアが2基減っているのでマルチスレッド性能に不安がありましたが、これらの結果を見て杞憂に終わりました。
Core i5-14600Kのゲーム性能を検証:Core i7-12700と比較
ゲーム性能を計測するにあたって、以下の10つのソフトを使用します。その内ゲームソフトは9本です。
- 3DMark
- ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ
- BLUE PROTOCOL
- Assassin’s Creed Mirage
- Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
- Call of Duty: Modern Warfare 3
- Watch Dogs: Legion
- Cyberpunk 2077
- ARMORED CORE Ⅵ
- Overwatch 2
3DMark
まずは3Dグラフィックスベンチマークを計測する代表的なソフト、「3DMark」からです。今回、テストに使用したのは「Fire Strike」、「Time Spy」、「Speed Way」の3種類です。
Core i5-14600Kの総合スコアはCore i7-12700と比較して0.3%~10%ほど上回っています。負荷が重いほどGPU性能に左右されるので差がなくなります。例えば、最も負荷が重い「Speed Way」ではほとんど差がついていません。
対照的に最も負荷が軽い「Fire Strike」ではCore i7-12700と比較して約10%ほど上回っています。
- Fire Strike:DirectX 11の性能をテストするベンチマークテスト
- Time Spy:DirectX 12の性能をテストするベンチマークテスト
- Speed Way:DirectX 12 Ultimateの性能をテストするベンチマークテスト
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ
専用のベンチマークツールを使用します。
Core i5-14600KのフルHD解像度の平均fpsはCore i7-12700と比較して約16%ほど上回っています。WQHD解像度でも約10%上回っています。4K解像度では差はほとんどありません。
BLUE PROTOCOL
専用のベンチマークツールを使用します。
Core i5-14600KのフルHD解像度の平均fpsはCore i7-12700と比較して約8%ほど上回っています。WQHD解像度、4K解像度で差はほとんどありません。
Assassin’s Creed Mirage
ゲーム内のベンチマークを使用します。
Core i5-14600KのフルHD解像度の平均fpsはCore i7-12700と比較して約7%ほど上回っています。WQHD解像度、4K解像度で差はほとんどありません。
Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
ゲーム内のベンチマークを使用します。
Core i5-14600KのフルHD解像度の平均fpsはCore i7-12700と比較して約11%ほど上回っています。WQHD解像度、4K解像度で差はほとんどありません。
Call of Duty: Modern Warfare 3
ゲーム内のベンチマークを使用します。
フルHD解像度、WQHD解像度、4K解像度で差はほとんどありません。
Watch Dogs: Legion
ゲーム内のベンチマークを使用します。
Core i5-14600KのフルHD解像度の平均fpsはCore i7-12700と比較して約5%ほど上回っています。WQHD解像度、4K解像度で差はほとんどありません。
Cyberpunk 2077
ゲーム内のベンチマークを使用します。
フルHD解像度、WQHD解像度、4K解像度で差はほとんどありません。
ARMORED CORE Ⅵ
ゲーム内にベンチマークがないので手動計測です。
Core i5-14600KのフルHD解像度の平均fpsはCore i7-12700と比較して約4%ほど上回っています。WQHD解像度、4K解像度で差はほとんどありません。
Overwatch 2
ゲーム内にベンチマークがないので手動計測です。
Core i5-14600KのフルHD解像度の平均fpsはCore i7-12700と比較して約2%ほど上回っています。WQHD解像度でも約10%上回っています。4K解像度では差はほとんどありません。
思ったほどゲーム性能は差が開いた印象です。やはりCore i5-14600Kの2次キャッシュ量の多さがゲーム性能に寄与しているようです。また平均fpsだけでなく、最低fpsもCore i5-14600Kのほうが安定している印象です。
Core i5-14600KのCPU温度と消費電力を検証:Core i7-12700と比較
最後に消費電力とCPU温度を確認します。負荷テストには「アイドル時」、「CINEBENCH 2024」、「FF14ベンチマーク」の3種類を使用します。
「アイドル時」はPC起動後10分間放置した最低値を採用。「CINEBENCH 2024」はシングルコアテスト、マルチコアテストをそれぞれ10分間実施し、最高値を採用。「FF14ベンチマーク」はグラフィックは最高、解像度は4Kに設定し、最高値を採用します。
「アイドル時」の消費電力はCore i5-14600KFとCore i7-12700ともに8W前後でほとんど同じでした。
「CINEBENCH R2024:シングルコア」実行時の消費電力はCore i5-14600KFが70W前後、Core i7-12700が62W前後と、その差は8Wほどでした。
「CINEBENCH R2024:マルチコア」実行時の消費電力はCore i5-14600KFが199W前後、Core i7-12700が147W前後と、その差は52Wほどでした。
「ファイナルファンタジー14ベンチマーク」実行時の消費電力はCore i5-14600KFが81W前後、Core i7-12700が68W前後と、その差は13Wほどでした。
「アイドル時」のCPU温度はCore i5-14600KFが27℃、Core i7-12700が21℃と、その差は6℃でした。
「CINEBENCH R2024:シングルコア」実行時のCPU温度はCore i5-14600KFが51℃、Core i7-12700が52℃と、その差は1℃でした。
「CINEBENCH R2024:マルチコア」実行時のCPU温度はCore i5-14600KFが96℃、Core i7-12700が72℃と、その差は24℃でした。
「ファイナルファンタジー14ベンチマーク」実行時のCPU温度はCore i5-14600KFが59℃、Core i7-12700が48℃と、その差は3℃でした。
電力無制限状態のCore i5-14600Kの高負荷時はかなり発熱するので、大型空冷クーラーや簡易水冷クーラーを推奨します。ゲームくらいの負荷であれば、小型空冷クーラーでも十分冷やせると思います。
Core i5-14600K搭載の良かったところ・悪かったところ
メリット | デメリット |
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Pコアのクロック周波数が最大5.3GHzに達する 強力なシングルスレッド性能 豊富な2次キャッシュがもたらす高いゲーミング性能 DDR4/DDR5メモリ両対応 インテル600シリーズの古いマザーでも使える PCIe 5.0、PCIe 4.0に対応 一般的な用途でも高いパフォーマンスを発揮 コストパフォーマンスが高い ゲーム実行時の消費電力・CPU温度は大人しい |
Core i5-13600Kからの進化はほぼなし 付属クーラーなし 高負荷時のCPU消費電力・CPU温度が高い |
まとめ
Core i5-14600Kはインテル第12世代のCore i7を超える性能を発揮します。実際、一般的なベンチマーク、ゲームベンチマーク結果を見ると、Core i7-12700を圧倒しました。
やはり、CPUアーキテクチャーのRaptor Coveは優秀です。
インテル第13世代のCore i5-13600Kからの乗り換えは全く意味がないですが、例えば、インテル第10世代、第11世代などの少し古い世代からの乗り換えでも、性能向上は十分実感できます。
Core i5-14500までのCPUアーキテクチャーはGolden Coveなので、Raptor Cove採用の一番安価なモデルはCore i5-14600Kになります。
そういう意味ではこのCore i5-14600Kは貴重な存在と言えます。
古い600シリーズのマザーボードやDDR4メモリも使用できますので、総じてコストパフォーマンスは優秀と言えます。