Core i5-11400Fをレビュー!PL無効化で性能は上がるが色々と面倒なCPU
第11世代インテルCPU、Rocket Lake-Sのcore i5-11400Fは、デフォルト状態だと65W制限がかかっており、性能がフルに発揮されません。
しかし、65W制限を解除、いわゆるPL無効化してやると、性能がフルに発揮され、驚くほど性能が向上します。今回はcore i5-11400FのPLを無効化して、どれだけ性能が向上するのか検証したいと思います。
PL無効化しないまま、core i5-11400Fを使い続けている人もいるかと思います。様々なデメリットもありますが、性能が向上するので、ぜひPL無効化して使うことをおすすめします。
動画はこちら↓。
core i5-11400Fとは
内蔵GPUがついているモデルは、末尾にFがない、core i5-11400になります。自分の場合、内蔵GPUが必要なかったので、core i5-11400Fを選びました。
core i5-11400F | core i5-11400 | |
開発コードネーム | Rocket Lake-S | |
コアアーキテクチャ | Cypress code | |
製造プロセス | 14nm | |
プラットフォーム | LGA1200 | |
コア数 / スレッド数 | 6コア / 12スレッド | |
キャッシュ(L3) | 12MB | |
対応メモリ | DDR4-3200 / gear 2 | |
PCI-Express | PCI-Express 4.0 | |
グラフィックス機能 | なし | Intel UHD Graphics 730 |
TDP | 65W | |
参考価格 | 約2万円 | 約2万2千円 |
Core i5-11400
Core i5-11400F
Core i5-11400Fのパフォーマンスを最大限に引き上げる方法
自分のPCスペックは下記の通りです。このPCでCorei5-11400Fのベンチマークをしたいと思います。
CPU | core i5-11400F |
マザーボード | MSI B560M BAZOOKA |
メモリ | DDR4-3200 8G×2(KD48GU880-32A160U) |
グラフィックボード | RTX3060(Colorful RTX 3060 NB 12G) |
SSD | NVMe 240G(CRAS C700 M.2)※OS用 HDD 4TB(ST4000DM004)※ゲーム用 |
電源ユニット | 750W(V750 Semi-Modular RS750-AMAAG1-JP) |
OS | Windows 10 Home |
core i5-11400Fのベンチマークを見せる前に、まず説明したいことがあります。それは「メモリのgear1 / gear2」、「電力制限あり / 電力制限なし(PL1、PL2)」の設定です。
この設定次第でcore i5-11400Fのスコアは大きく変わります。
gear1 / gear2について
Rocket Lake-Sから「gear1」、「gear2」というメモリコントローラーの動作モードが2種類導入されました。
gear1 | メモリとメモリコントローラのクロック周波数が等しい動作モード。(1:1動作) |
gear2 | メモリコントローラがメモリの2分の1倍速になる動作モード。(1:2動作) |
この「gear1」、「gear2」という概念、非常にややこしく分かりにくいです。現に自分も初めて目にしたとき、理解するのに時間がかかりました。
「gear1」だとメモリの性能が引き出されますが、「gear2」だと逆に性能が落ちてしまうと理解してもらっても構いません。
この「gear1」、「gear2」はDDR4-3200のメモリを使用した際、大きな問題を引き起こす可能性があります。
というのも、DDR4-3200をgear1で動作可能なのは、最上位のCore i9-11900K(F)のみだからです。
Core i9-11900K(F)以外のCPUは、gear1でDDR4-3200で動作できません。gear1動作はDDR4-2933までとなります。
つまり、core i5-11400Fはgear1で動作可能なのはDDR4-2933までとなります。もちろん、DDR4-3200も設定できますが、その場合はgear2での動作となります。
上記の仕様がありますが、自分が所有しているメモリでは2933以上でもgear1設定できました。ただインテルの仕様通り、2933以上でgear1設定できない例もあるかも知れないので確実なことは言えません。
DDR4-2933(gear1)、DDR4-3200(gear2)で性能に違いがでるのでしょうか?FF14ベンチマークソフト、FF15ベンチマークソフトで実際に検証してみました。
このように、DDR4-3200(gear2)よりDDR4-2933(gear1)に設定した方が、ゲームパフォーマンスが上がりました。
参考までにDDR4-2933(gear1)の設定方法を、msi B560M BAZOOKAのbios画面を使って解説したいと思います。
電力制限(PL)あり / 電力制限解除(PL)について
PL1とPL2とはそれぞれ、Power Limit 1、Power Limit 2のことで、いわゆる電力制限のことです。
PL1は、一般的にTDPと表記されている値のことで、この消費電力を超えないようにCPUは調整されます。
PL2は、熱的に余裕がある状態限定で、TDP以上の消費電力を超えて性能を引き出します。ただし、時間制限付きで、すぐにまたPL1に収まるように調整されます。
もちろん、core i5-11400FにもPL1、PL2が設定されており、初期状態ではPL1が65W、PL2が154Wでした。
初期状態だとPL1が65Wなので、CPUの消費電力が65Wを超えないように調整され、CPU負荷100%時、全コアのクロック周波数が2.7Ghz位まで落ちます。
一方、PL無効化をすると、PL1が135W、PL2が180Wに設定されるので、全コアのクロック周波数が4.2Ghzに固定されます。
これはゲーム中の負荷でも同様です。例えば、アサシンクリードオリジンズをプレーしたところ、PL無効化時ではクロック周波数が4.2Ghz出ていますが、PL65W制限時は3Ghz前半まで落ち込みました。
PL無効化時、PL65W時のクロック周波数の違いがゲームのパフォーマンスに大きな違いを生みます。
参考までにPL無効化の設定方法を、マザーボードのmsi B560M BAZOOKAのbios画面を使って解説したいと思います。
core i5-11400Fの性能をチェック
Corei5-11400FをPL65W制限とPL無効化、それぞれ設定をして、実際にベンチマーク、ゲーム性能をチェックしてみました。なおメモリの設定は全てDDR4-2933(gear1)にしています。
ベンチマーク
Cinebench R23
Cinebench R23だと、PL65W制限のときのスコアは6879でしたが、PL無効化だとマルチコアのスコアは10096まで上がりました。スコアの差は約3000程です。
ただシングルコアのスコアに関しては大きな差はつかなかったです。
マルチスコア | シングルスコア | |
Ryzen 5 3600 | 9073 | 1245 |
core i5 11400F(PL無効化) | 10096 | 1409 |
Ryzen 5 5600X | 11201 | 1593 |
引用:https://www.cgdirector.com/cinebench-r23-scores-updated-results/
ちなみにライバルになりそうな他のCPUと性能を比べてみました。値段を考えたら、core i5 11400Fはかなり健闘していると思います。
3DMARK
3DMARKのCPU scoreだと、PL65W制限のときのスコアは6458でしたが、PL無効化だとスコアは8569まで上がりました。スコアの差は2000ほどです。
CPU MARK
PASSMARKのCPU MARKだと、PL65W制限のときのスコアは15681でしたが、PL無効化だとスコアは18732まで上がりました。スコアの差は3000ほどです。
ゲーム性能
フォートナイト
PL無効化 | PL65W | |
平均FPS | 332.6 | 314.5 |
解像度1920×1080、低設定、バトルロイヤルをプレーしてそのリプレイを再生しました。平均FPSは約15ほど差が開きました。
BF2042
PL無効化 | PL65W | |
平均FPS | 140.6 | 126.9 |
解像度1920×1080、低設定、演習場で計測しました。平均FPSは約15ほど差が開きました。ちなみに正式な演習場ではなく、ポータルというモードで第三者が作ったものです。
アサシンクリードオリジンズ
PL無効化 | PL65W | |
スコア | 16416 | 14608 |
平均FPS | 139 | 122 |
解像度1920×1080、低設定でベンチマークを実行しました。スコアは2000程、平均FPSは20程差が開きました。
レインボーシックスシージ
PL無効化 | PL65W | |
平均FPS | 400 | 362 |
解像度1920×1080、低設定でベンチマークを実行しました。平均FPSは40程差が開きました。
ゲームにもよると思いますが、大抵の場合、PL無効化するだけで平均フレームレートが上昇します。ゲームをプレーするのなら、PL無効化をおすすめします。
core i5-11400FのCPU温度、消費電力について
core i5-11400FのCPU温度について
corei5 11400Fに付属しているリテールクーラーは黒一色で、質感も以前のリテールクーラーと比べると向上したのですが、冷却性能がイマイチな点は相変わらずです。
PL65W制限時のCPU温度(リテールクーラー装着時)
10分間何もせず放置して、アイドル時のCPU温度を測定してみました。平均CPU温度は42.9度でした。
OCCTで10分間、CPU負荷100%をかけた際のCPU温度の平均CPU温度は77.4度でした。
一応、PL65W制限時では、リテールクーラーでも70度代で収まるので運用は十分可能ですが、80度近くに達しているので少々不安です。
PL無効化時のCPU温度(リテールクーラー装着時)
アイドル時の平均CPU温度は42.6度でした。アイドル時の温度はPL65W時とほぼ変わりません。
一方、CPU負荷100%時の平均CPU温度は99.7度でした。PL無効化時でCPUに負荷をかけた場合、リテールクーラーでは冷やしきれません。
PL無効化時はクロックが4.2Ghzで維持されるのですが、リテールクーラー装着時ではサーマルスロットリングが起きて、3.0Ghz前後まで落ちてしまいました。これでは性能を発揮できません。
社外品のCPUクーラー(SE-224-XT)換装後のCPU温度について
今回自分が使用したのはSE-224-XTというCPUクーラーです。コスパが高いと評判のCPUクーラーです。※現在はSE-224-XTAという型番に代わっているようです。なお製品そのものはSE-224-XTと全く同一です。
SE-224-XT換装後、PL無効化し、OCCTで10分間、CPU負荷100%をかけてみました。SE-224-XT換装後、平均CPU温度は75.7度でした。
リテールクーラー装着時の平均CPU温度は99.7度だったので、大幅に冷えています。
core i5-11400Fの消費電力について
フォートナイトプレー時のシステム全体の消費電力は265W前後でした。PL無効化時は、PL65W制限時と比べると、約50Wほど、消費電力は増えています。
core i5-11400Fの良かったところ、悪かったところについて
良かったところ
脅威のコストパフォーマンス
Corei5-11400FのPLを無効化すると、Cinebench R23(マルチ)のスコアが約1万になります。
一方、Ryzen 5 5600XのCinebench R23(マルチ)のスコアは、こちらのサイトを参照すると、11201になります。
約2万円のcore i5-11400Fが約3万6千円のRyzen 5 5600Xのほぼ9割くらいのスコアを叩きだしているので、驚異のコストパフォーマンスと言う他ないです。
悪かったところ
PL無効化しないとcore i5-11400Fを買う意味がなくなる
core i5-11400FのPLを無効化しないとCinebench R23(マルチ)のスコアは7000位まで落ちてしまいます。このスコアは前世代のCorei5-10400Fより低いです。
つまり、PL無効化しないと、前世代以下の性能しか発揮できないということになります。PL無効化を考えていないのなら、素直にCorei5-10400Fの方をおススメします。
PL無効化した場合、CPU温度、消費電力が高くなる
PL無効化した場合、CPU温度は、リテールクーラーを使った場合、100度に達し、サーマルスロットリングが働きます。つまり、別途社外品のCPUクーラーが必要になり、余計に出費することになります。
ただ、SE-224-XTのような3,000円代のCPUクーラーでも70度くらいまでCPU温度が抑えられるので、水冷式のCPUクーラーや高級の空冷CPUクーラーは必要ありません。
またPL無効化すると、消費電力も高くなります。特にCinebenchなどのベンチマーク実行時、CPUの消費電力は135W前後まで高くなります。
ただ、ゲーム実行時はそこまで負荷はかからないので100W前後に収まります。それでもPL65W時と比べると約40W位消費電力が高くなっています。
性能をフルに発揮させるためのBIOS設定が面倒
ただ、PL1、PL2の設定はmsiのマザーボードであれば、比較的簡単です。msiのBIOSでは、PL1、PL2の設定はグラフィカルに表示されているので、初心者でも分かりやすいです。
PL無効化を考えた場合のマザーボード選びが面倒
PLを無効化をすると、当然熱や消費電力が増えます。PL無効化をするのであれば、できれば電力回路がしっかりして、VRMの冷却に優れたマザーボードを選びたいところです。
そこで候補となるのが、Z590のマザーボードになりますが、値段は2万円以上が相場で、core i5-11400Fの運用を考えた時、一気にコストパフォーマンスは悪化します。
そこでおススメしたいのがB560のマザーボードです。価格は1万円からのものが多く、比較的買いやすいモデルも多いです。
ただ1つ注意事項はあります。まずはこちらの動画をご覧ください。
各B560マザーボードに負荷をかけた時の、マザーボード裏側の温度を測定しています。50度内に収まっているものもありますが、100度近くに達しているものもあります。
基本的にどのマザーボードでもPL無効化はできますが、さすがにマザーボード裏側が100度近くいくものに関しては、PL無効化はあまり推奨はできません。
長時間使えば、周辺機器に熱によるダメージを与える可能性があり、結果的にPC全体の劣化を早める恐れがあります。
同じB560のマザーボードでもPL無効化に向いていないマザーボードもあるということは、頭に入れておいた方がいいと思います。
個人的には1万円以下のモデルより、大型のVRMヒートシンクがあり、電源回路もそこそこしっかりしていて、それなりに安い、msiのB560M BAZOOKAやASUSのTUF GAMING B560M-PLUSや、 TUF GAMING B560M-PLUS WIFIあたりのミドルクラス帯のマザーボードがおススメです。
実際にB560M BAZOOKAで、OCCTでCPU負荷100%にして30分経過後のマザーボード裏側の温度を計測してみました。
PL65W制限時のマザーボード裏側の温度は40度代後半でした。一方、PL無効化時のマザーボード裏側の温度は50度代前半でした。
この温度であれば、PL無効化しても十分常用に耐えられると思います。
まとめ
core i5-11400Fは一見すると、デメリットばかりが目立ちますが、これらのデメリットさえ目をつぶれば、これほどコスパの高いCPUもありません。
第12世代のalder lakeが出れば、core i5-11400Fも1世代古くなるので、さらなる値下がりも予想できます。現に第10世代のcore i5 10400Fもcore i5-11400F発売後、かなり安くなりました。
PL無効化で性能は上がりますが、消費電力増大、CPU温度上昇、BIOSでの設定など、面倒さが増えるCPUではあります。しかし、価格が安く高性能なCPUを探しているのなら、このcore i5-11400F、自信をもっておすすめできます。
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