「EXCERIA G2」はKIOXIAのエントリークラスに位置付けられるNVMe SSDです。
最大の特徴はDRAMキャッシュが搭載されているところです。エントリークラスのNVMe SSDの多くは、コスト削減のために、DRAMキャッシュを搭載していません。
その点、「EXCERIA G2」はエントリークラスなのにしっかりDRAMキャッシュを搭載します。
今回は1TBモデルを購入したので、実際に検証して「EXCERIA G2」の実力を探っていきます。
「EXCERIA G2」の仕様
SSD-CK500N3G2/N | SSD-CK1.0N3G2/N | SSD-CK2.0N3G2/N | |
---|---|---|---|
容量 | 500GB | 1TB | 2TB |
接続インターフェース | PCI Express 3.0(x4) | ||
形状 | M.2 2280 | ||
NANDフラッシュメモリ | KIOXIA 3D TLC NAND | ||
コントローラ | KIOXIA 2209CE | ||
最大シーケンシャルリード速度(MB/s) | 2,100 | ||
最大シーケンシャルライト速度(MB/s) | 1,700 | ||
最大ランダムリード 4KB 速度(IOPS) | 400,000 IOPS | 360,000 IOPS | |
最大ランダムライト 4KB 速度(IOPS) | 400,000 IOPS | ||
耐久性(TBW) | 200 | 400 | 800 |
製品保証 | 5年 |
「EXCERIA G2」は、KIOKIAが展開しているEXCERIAシリーズののエントリー向けNVMe SSDです。従来販売されていた「EXCERIA」の後継として販売されています。
特長を簡単にまとめたものが下記になります。
- 低価格
- 3次元フラッシュメモリの「BiCS FLASH」を搭載
- 自社生産のNANDメモリを搭載
- 低価格なのに、DRAMキャッシュを搭載
大抵の低価格帯のモデルはほぼDRAMキャッシュレスなので、DRAMキャッシュ搭載の「EXCERIA G2」の存在は貴重だと言えます。
ただその分、速度やTBWは他社ライバル製品と比べると控えめな数値です。
とはいえ、そのあたりが劣っていても、実用上特に問題にはならず、総じて「EXCERIA G2」のコスパは高いと言えます。
<パソコン工房>
「EXCERIA G2」の外観
パッケージはイメージカラーのオレンジが目立っています。
「EXCERIA G2」の形状はM.2 2280、接続インターフェースはPCI Express 3.0(x4)に対応。基盤の色は濃い緑色に統一されています。
裏面にはチップはなく、片面実装になっています。
使い込んでから撮影しているので、刻印が消えているので、詳細は把握できませんでした。上の画像でいうと、上段にDRAMキャッシュ、下段にSSDコントローラーを搭載していることを確認しました。
シールをはがすと4枚のNANDメモリの搭載を確認しました。こちらも刻印が消えかかっていますが、かろうじて、「TH58LKT1T25BA8C」という型番を確認しました。
「EXCERIA G2」のパフォーマンスをチェック
テスト環境
実際に検証機に「EXCERIA G2」を取り付け、パフォーマンスをチェックします。テスト環境は下記の通りです。
テスト環境 | |
---|---|
マザーボード | MSI 「PRO B660M-A」 |
CPU | インテル 「Core i7-12700」 |
メモリー | Crucial 「CT2K16G4DFRA32A」(DDR4-3200/16GB×2) |
グラフィック | GAINWARD「GeForce RTX 4070 Ghost」 |
システム用ストレージ | KIOXIA「EXCERIA G2 1TB」 |
OS | Windows 11 64bit版 |
チップセット直結のM.2スロットだと若干の性能低下を引き起こすので、今回の検証では、CPU直結のM.2スロットにさしています。
「EXCERIA G2」の基本情報をCrystal Disk Infoで取得。対応転送モードはPCIe 3.0 x4接続なのを確認。
フォーマット時の空き容量は931GBでした。
CrystalDiskMark 8.0.4
ストレージの基礎性能を測る「CrystalDiskMark 8.0.4」の結果です。
読み込み速度は約2012 MB/s、書き込み速度は1617 MB/sと、シーケンシャル速度はおおよそ公称値に近い速度が出ています。
ただし、テストサイズを64GiBまで上がると、書き込み性能が300 MB/sほど下がります。またランダム性能も若干低下します。
シーケンシャル読み込み、書き込み速度を他のSSDと比較しました。「EXCERIA 1TB」はSN580 1TBのほぼ2分の1くらいの速度でした。
ランダム読み込み、書き込み速度は他のSSDと比較しても、大した差はありません。むしろ、ランダム書き込みではSN 770 1TB、SN 580を上回る結果に。この結果はDRAMキャッシュの有無が関係しているのかもしれません。
3DMark Storage Benchmark
ゲーム環境におけるストレージ性能を測る「3DMark Storage Benchmark」の結果です。
総合スコアは1125でした。
総合スコアを他のSSDと比較しました。「EXCERIA 1TB」はSN 770 1TBの3分の1くらいのスコアでした。やはりゲームに強いと言われる、SN770とは大きな差が開きました。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
4K解像度、最高設定のファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを実行し、ローディングタイムを計測。
SN 770と比べると、「EXCERIA 1TB」のローディングタイムは約0.8秒多くかかっています。
「EXCERIA G2」のSLCキャッシュ
「EXCERIA G2
まず、HD Tune Proのファイルベンチマークで、100GB連続書き込みをします。
ベンチマーク開始直後は1700Mb/sの速度で書き込んでいましたが、約25GB書き込んだところでSLCキャッシュ切れの兆候が見え、速度が落ち込みます。落ち込んだ後は約700MB/sの速度を維持しています。
次にSlow Markを使用し、全容量を連続書き込みし、SLCキャッシュの容量を調べます。
23.4 GB書き込むまでは923.0 MB/sの速度で書き込んでいましたが、SLCキャッシュ枯渇後は437.7 MB/sの速度を最後まで維持しています。
「SN770」、「SN580」も、搭載NANDメモリの全容量をSLCキャッシュに割り当てるため、SLCキャッシュの容量は340GB超える大容量でした。また、両SSDともに、SLCキャッシュ枯渇後もSATA SSD並みの速度は出ているので極端に遅いわけではありません。
SLCキャッシュの容量はディスクの空き容量に左右されます。
そこで今度は空き容量約30%(300GB)の状態で検証したいと思います。
空き容量約30%の状態で、全容量を書き込みます。
8 GB書き込むまでは897.4 MB/sの速度で書き込んでいましたが、SLCキャッシュ枯渇後は437.2 MB/sの速度を最後まで維持しています。
SLCキャッシュは空き容量が少なくなると、さらに確保される容量が減ります。
全容量書き込み平均速度を他のSSDと比較します。他のSSDと比較すると「EXCERIA 1TB」の平均速度は300MB/sほど遅いです。
「EXCERIA G2」の温度をチェック
5分間連続書き込み中の「EXCERIA G2」の温度をヒートシンク、エアフローなしで計測します。なお計測ツールには「HWiNFO」を使用します。
結果は以下の通りです。
最高温度は73℃まで上がりました。
ヒートシンク、エアフローなしにしては温度は低いです。
ただ、サーマルカメラで表面温度を計測したところ、SSDコントローラーは最大93.1℃、NANDメモリは62.4℃まで上昇していました。
やはり、ヒートシンクはつけて、さらにエアフローが良好な環境下での使用をおすすめします。
「WD_BLACK SN770 NVMe」のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
低価格 ランダム性能はそこそこ ゲームロード性能はそこそこ SLCキャッシュ枯渇後はSATA SSD並みの書き込み速度を維持 | シーケンシャル性能は低い TBWが低い※実用上問題ない SLCキャッシュの容量が少ない |
まとめ
「EXCERIA G2」はエントリー帯の位置づけなので、ライバル製品と比較するとやはり性能は劣ります。
ただ、ライバル製品のほとんどはDRAMキャッシュを搭載していないので、きちんと搭載している「EXCERIA G2」は明確な強みがあります。
性能は低いといっても、SATA SSDと比較すると一線を画す性能は持っていますし、なにより体感上明確にスピードが遅いと感じにくいです。
DRAMキャッシュを搭載していて低価格なのは事実上「EXCERIA G2」のみなので、その点に魅力を感じたのなら、購入の価値があります。
<パソコン工房