インテル700シリーズのマザボードの選び方を解説! Z790、H770、B760やインテル600シリーズとの違いについて
インテル第13世代CPU「Raptor lake」に対応する、「Z790」、「H770」、「B760」チップセット搭載マザーボードが発売されています。
ただ、厄介なことに、インテル第13世代CPU「Raptor lake」は、インテル第12世代CPU「Alder Lake」に対応する、「Z690」、「H670」、「B660」、「H610」チップセット搭載マザーボードにも対応しています。
同じLGA1700プラットフォームを採用しているので、互換性は広く、その分ややこしくなっています。
ここでは、「Z790」、「H770」、「B760」だけでなく、「インテル600シリーズ」との違いについても解説したいと思います。
インテル700シリーズチップセットとは
Intel Z790 | Intel H770 | Intel B760 | Intel Z690 | Intel H670 | Intel B660 | |
---|---|---|---|---|---|---|
対応CPUソケット | LGA1700 | LGA1700 | LGA1700 | LGA1700 | LGA1700 | LGA1700 |
PCIe 5.0×16(CPU側グラフィックス用) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
NVMe M.2(CPU側) | PCIe 4.0×4 | PCIe 4.0×4 | PCIe 4.0×4 | PCIe 4.0×4 | PCIe 4.0×4 | PCIe 4.0×4 |
倍率アンロックCPUのOC | 〇 | × | × | 〇 | × | × |
メモリのOC | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
CPU側PCI Expressの分割 | 〇 | 〇 | × | 〇 | 〇 | × |
チップセット側PCI Express | 4.0(最大20レーン) 3.0(最大8レーン) | 4.0(最大16レーン) 3.0(最大8レーン) | 4.0(最大10レーン) 3.0(最大4レーン) | 4.0(最大12レーン) 3.0(最大16レーン) | 4.0(最大12レーン) 3.0(最大12レーン) | 4.0(最大6レーン) 3.0(最大8レーン) |
Serial ATA 3.0 | 最大8 | 最大8 | 最大4 | 最大8 | 最大8 | 最大4 |
USB 20Gbps | 最大5 | 最大2 | 最大2 | 最大4 | 最大2 | 最大2 |
USB 10 Gbps | 最大10 | 最大4 | 最大4 | 最大10 | 最大4 | 最大4 |
USB 5 Gbps | 最大10 | 最大8 | 最大6 | 最大10 | 最大8 | 最大6 |
上記の表は、インテル 700 シリーズチップセットの「Z790」、「H770」、「B760」と、インテル 600 シリーズチップセット「Z690」、「H670」、「B660」の仕様の比較表です。
インテル 600 シリーズチップセットからインテル 700 シリーズチップセットに世代交代しましたが、正直、この仕様表を見ても劇的に進化している点は見当たりません。
強いて言うなら、世代交代によって進化した点は、以下の2点にまとめられます。
- USB 20Gbpsのサポート数が増加
- PCI Expressのレーン数が増加
要約すると、インテル 700 シリーズチップセットになって、高速なストレージをより多く搭載しやすくなり、拡張性が増したとまとめられます。
ただ、これらの仕様はあくまでも最大値です。低価格のマザーボードでは、USB 20Gbpsのサポート数やPCI Express 4.0のレーン数が減らされている可能性もあります。
現在、発売してから時期が経過したこともあり、700番台のチップセットを搭載したマザーボードは安くなっています。
そのため、600番台のチップセットを搭載したマザーボードとの価格差はほとんどありません。
600番台のチップセットを搭載したマザーボードをあえて選ぶ必要はありません。
DDR4メモリーとDDR5メモリーについて
インテル700シリーズのチップセットはDDR4だけでなく、最新規格であるDDR5メモリーもサポートしています。
そのため、マザーボードメーカー各社はDDR4メモリー対応モデルだけでなく、DDR5メモリー対応モデルも併売しています。
ただ、一つ注意があります。
それはDDR4メモリーとDDR5メモリーのスロットは形状が異なるので、互換性はないということです。
マザーボードの製品名の末尾に「DDR4」、「DDR5」と記載があるので、マザーボードを購入する際はよく確認しましょう。
インテル700シリーズチップセットの特徴
B760チップセット
B760 | ||
ソケット | LGA1700 | |
サポートCPU | インテル第12世代CPU「Alder lake」 インテル第13世代CPU「Raptor Lake」 インテル第14世代CPU「Raptor Lake Refresh」 | |
オーバークロック対応 | CPUの× | |
オーバークロック対応 | メモリの〇 | |
CPU側PCIeレーン数 | (GPU向け) | PCIe Gen5レーン数1×16レーン(分割不可) |
(NVMe向け) | PCIe Gen4レーン数1×4レーン | |
チップセット側PCIeレーン | 4.0 | 最大10レーン |
3.0 | 最大4レーン | |
システムバス | DMI 4.0 x4 | |
USB 20Gbps | 最大2 | |
USB 10Gbps | 最大4 | |
USB 5Gbps | 最大6 | |
SATA 3.0 | 最大4 |
B760は700シリーズチップセットの中では最も下位に位置するチップセットです。
メモリのオーバークロックは可能ですが、CPUのオーバークロックには非対応です。また、Z790、H670と比較すると、SATAやUSBの最大数が少なく、全体的に拡張性に乏しいです。
他のチップセットと比べると、拡張性や機能面に劣りますが、その分、価格は抑えられており、総じてコスパが高いモデルが多いです。
ただし、価格の幅が広く、1万円以下のものもあれば、3万円を超えるものもあり、バラエティに富んでいます。
当然、価格が安いモデルは電源フェーズ数は少なく、中にはVRMヒートシンクすらないものもあります。
安いモデルで、例えばCore i9-14900KなどのMTP(Maximum Turbo Power)が高いCPUを使う際は、電力制限を受けやすく、性能をフルに発揮できません。
ハイエンドのCPUの性能をフルに活かしたいというのであれば、マザーボード選びにおいて電源フェーズ数に気を配る必要があります。
B760チップセット搭載マザーボードを探す
H770チップセット
H770 | ||
ソケット | LGA1700 | |
サポートCPU | インテル第12世代CPU「Alder lake」 インテル第13世代CPU「Raptor Lake」 インテル第14世代CPU「Raptor Lake Refresh」 | |
オーバークロック対応 | CPUの× | |
オーバークロック対応 | メモリの〇 | |
CPU側PCIeレーン数 | (GPU向け) | PCIe Gen5レーン数1×16レーン or 2×8レーン(分割可) |
(NVMe向け) | PCIe Gen4レーン数1×4レーン | |
チップセット側PCIeレーン | 4.0 | 最大16レーン |
3.0 | 最大8レーン | |
システムバス | DMI 4.0 x8 | |
USB 20Gbps | 最大2 | |
USB 10Gbps | 最大4 | |
USB 5Gbps | 最大8 | |
SATA 3.0 | 最大8 |
B760は700シリーズチップセットの中では中位に位置するチップセットです。
B760と同じくメモリのオーバークロックは可能ですが、CPUのオーバークロックには非対応です。
ただし、B760と比較すると、レーン数、SATA、USBの最大数が多く、拡張性は優秀です。
ただ、B760、Z790チップセット搭載のマザーボードと比べると、H770チップセット搭載のマザーボードの数は少なく、選択肢に乏しいです。
H770チップセット搭載マザーボードを探す
Z790チップセット
Z790 | ||
ソケット | LGA1700 | |
サポートCPU | インテル第12世代CPU「Alder lake」 インテル第13世代CPU「Raptor Lake」 インテル第14世代CPU「Raptor Lake Refresh」 | |
オーバークロック対応 | CPUの〇 | |
オーバークロック対応 | メモリの〇 | |
CPU側PCIeレーン数 | (GPU向け) | PCIe Gen5レーン数1×16レーン or 2×8レーン(分割可) |
(NVMe向け) | PCIe Gen4レーン数1×4レーン | |
チップセット側PCIeレーン | 4.0 | 最大20レーン |
3.0 | 最大8レーン | |
システムバス | DMI 4.0 x8 | |
USB 20Gbps | 最大5 | |
USB 10Gbps | 最大10 | |
USB 5Gbps | 最大10 | |
SATA 3.0 | 最大8 |
700シリーズのチップセットの最上位に位置するのがこのZ790です。
Z690チップセットと、他のチップセットとの最大の差異が拡張性とCPUのオーバークロックです。
USBのポート数、レーン数が他のチップセットに比べると、圧倒的に多いです。拡張性を求めているのなら、Z790一択といっていいでしょう。
また、Z790チップセットを搭載したマザーボードのみ、CPUのオーバークロックが可能です。
そのため、フェーズ数が多く搭載、VRMヒートシンクも巨大という、電源回路の放熱に力を入れているモデルが多いです。
BTO各社、フラッグシップモデルとして位置づけていることもあり、豪華な仕様のマザーボードが多いです。
Z790チップセット搭載マザーボードを探す
どのチップセットがおすすめ?
どのチップセットがおすすめなのか、正直個々やりたいことや使用するCPUが異なるので、はっきりとは言うことはできないです。
とりあえず、皆さんがやりたいだろうと思われることをピックアップし、そのうえで、おすすめのチップセットを紹介します。
CPUのオーバークロックをしたい
拡張性を求めている
レーン数もUSBのポート数も他のチップセットを搭載したマザーボードを圧倒しています。
特にSATA経由でストレージを多く使いたいのなら、B760はかなり厳しいと思います。最大4ポートだからです。
SATAを多く使いたいのなら、最大8ポート使える、Z790がおすすめです。
マザーボードのサイズにはATX、MicroATX、Mini-ITXの3種類ありますが、拡張性の高さを求めているのならATXサイズのZ790チップセット搭載マザーボードをおすすめします。
とにかくコスパを追い求めたい
確かに拡張性や機能性ではZ790に劣っていますが、普通の使い方であれば、B760でも正直問題はありません。
おすすめインテル700シリーズマザーボードを紹介
最後に自分がおすすめするマザーボードを各チップセットから厳選して紹介します。
B760チップセット搭載おすすめマザーボード
GIGABYTE B760 DS3H DDR4
DDR4メモリなど既存のパーツを活かして、出来るだけ低予算で済ませたい方におすすめなのが、GIGABYTE B760 DS3H DDR4です。
電源フェーズ数が8+2+1フェーズで、ヒートシンクも小型で必要最低限など、非常に簡素な印象があります。
ただ、Core i5-14400など、ローエンド寄りのCPUを動作させるには正直十分すぎるスペックを持っています。
低価格なだけに、機能はシンプルですが、PCI Express 4.0×4対応のM,2スロットを2基搭載し、USB 20Gbpsなど、拡張性も必要十分にあります。
無線LANはサポートしませんが、有線LANさえあればいいと思う方には特に問題にはなりません。
製品名 | GIGABYTE B760 DS3H DDR4 |
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チップセット | B760 |
VRMフェーズ数 | 8+2+1 |
拡張スロット | PCI-E 4.0×16×1、PCI-E 3.0×1(×16形状)×4 |
ストレージインターフェース | M.2(PCI-E 4.0×4)×2、SATA 3.0×4 |
主なインターフェース | USB 20Gbps(Type-C)×1、USB 10Gbps×1、USB 5Gbps×2、USB 5Gbps(Type-C)×1 |
有線LAN | 1000BASE-T(Realtek) |
無線LAN | 非対応 |
サウンド | Realtek製(型番非公開) |
フォームファクタ | ATX |
実売価格 | 約15,000円前後 |
MSI B760 TOMAHAWK WIFI DDR5
できるだけ低予算でハイエンドのCPUをフルパワーで運用したい。そう考えている人におすすめなのが、「MSI B760 TOMAHAWK WIFI DDR5」です。
2万円前後のLGA1700マザーボードの中で、品質、機能が充実しているのが最大の特徴です。
電源フェースは75AのSPSを採用した12+1+1フェーズ構成。さらにVRMヒートシンクも冷却性能の高い巨大なものが装備されています。
Core i7-14700などのハイエンドCPUも安定して動作します。
PCI Express 4.0×4対応のM,2スロットを3基搭載し、拡張性も優秀です。
さらにPCI Express 5.0×16スロットを搭載しているので、より高性能なビデオカードが登場してもフルスペックで性能を引き出せます。
USB 20Gbps(Type-C)や2.5G有線LAN、6Ghz帯に対応したWi-Fi6E対応など、最新のマザーボードに必要な機能はある程度備わっています。
製品名 | MSI B760 TOMAHAWK WIFI DDR5 |
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チップセット | B760 |
VRMフェーズ数 | 12+1+1(75A SPS) |
拡張スロット | PCI-E 5.0×16×1、PCI-E 3.0×4(×16形状)×1、PCI-E 4.0×1×1 |
ストレージインターフェース | M.2(PCI-E 4.0×4)×2、M.2(PCI-E 4.0×4またはSATA 3.0)×1、SATA 3.0×4 |
主なインターフェース | USB 20Gbps(Type-C)×1、USB 10Gbps(Type-C)×1、USB 10Gbps×4、USB 5Gbps×2 |
有線LAN | 2.5BASE-T(Realtek) |
無線LAN | Wi-Fi 6E |
サウンド | Realtek ALC897 |
フォームファクタ | ATX |
実売価格 | 約20,000円前後 |
H770チップセット搭載おすすめマザーボード
ASUS TUF GAMING H770-PRO-WIFI
CPUのオーバークロックはしないけど、安定性、耐久性、拡張性を重視したい。それでいて予算を抑えたい。
そんな方におすすめなのが、「ASUS TUF GAMING H770-PRO-WIFI」です。
VRMは高耐久のコンデンサを採用した14+1フェーズ構成。大型のヒートシンクを採用し、冷却対策もしっかりおり、ハイエンドのCPUを長時間安定して動作可能です。
拡張スロットはPCI Express 5.0×16×1、PCI Express 4.0×4(×16形状)、PCI Express 3.0×1×2と豊富です。
さらにストレージインターフェースはPCI Express 4.0×4対応のM.2スロットを4基装備と隙がありません。
USBポートの数も多く、総じて拡張性は優秀です。
そのほか、2.5G有線LAN、Wi-Fi 6をサポートとネットワーク周りも充実しています。
製品名 | ASUS TUF GAMING H770-PRO-WIFI |
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チップセット | B770 |
VRMフェーズ数 | 14+1(DrMOS) |
拡張スロット | PCI-E 5.0×16×1、PCI-E 4.0×4(×16形状)×1、PCI-E 3.0×1×2 |
ストレージインターフェース | M.2(PCI-E 4.0×4)×3、M.2(PCI-E 4.0×4またはSATA 3.0)×1、SATA 3.0×4 |
主なインターフェース | USB 20Gbps(Type-C)×1、USB 10Gbps×2、USB 5Gbps×6、USB 5Gbps(Type-C)×1 |
有線LAN | 2.5BASE-T(Intel) |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
サウンド | Realtek(型番非公表) |
フォームファクタ | ATX |
実売価格 | 約23,000円前後 |
Z690チップセット搭載おすすめマザーボード
ASrock Z790 Steel Legend WiFi
なるべく予算を抑えたいが、CPUのオーバークロックをしたい。
そんな方におすすめなのが、「ASrock Z790 Steel Legend WiFi」です。
CPUのオーバークロックに対応するために、電源部がしっかりしている必要がありますが、その点、本機は60A対応の16+1+1フェーズ構成のVRMを搭載。
例えば、Core i9-14900Kを限界ギリギリまでオーバークロックするというのは流石に厳しいですが、お遊び程度のオーバークロックであれば、十分楽しめます。
PCI Express 5.0×16スロットに加え、PCI Express 5.0×4対応のM.2スロットを装備と、抜かりがありません。
2.5Gの有線LAN、Wi-Fi 6Eなど、ネットワーク機能も万全です。
製品名 | ASUS TUF GAMING H770-PRO-WIFI |
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チップセット | B770 |
VRMフェーズ数 | 14+1(DrMOS) |
拡張スロット | PCI-E 5.0×16×1、PCI-E 4.0×4(×16形状)×1、PCI-E 3.0×1×2 |
ストレージインターフェース | M.2(PCI-E 4.0×4)×3、M.2(PCI-E 4.0×4またはSATA 3.0)×1、SATA 3.0×4 |
主なインターフェース | USB 20Gbps(Type-C)×1、USB 10Gbps×2、USB 5Gbps×6、USB 5Gbps(Type-C)×1 |
有線LAN | 2.5BASE-T(Intel) |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
サウンド | Realtek(型番非公表) |
フォームファクタ | ATX |
実売価格 | 約23,000円前後 |
まとめ
LGA1700ソケットのCPUの場合、マザーボード選びは、Z790、H770、B760から選べばいいのでそこまでマザーボード選びに苦戦はしません。
ただ、各チップセットによって、機能面で違いはあるので、後悔を避けるためにも、まずは各チップセットの違いについて理解を深めるのが重要です。