Core i7-12700をレビュー!Core i5-12400と比較。どっちがおすすめ?
core i7-12700とcore i5-12400はインテル第12世代Alder Lake-Sの売り上げランキングでも1位、2位を争うほどの人気CPUです。
core i7-12700とcore i5-12400のどっちを購入すべきか迷っている方も意外と多くいるかもしれません。
そこで今回、core i7-12700とcore i5-12400の性能を比較検証して、どちらがおすすめなCPUなのか、自分なりの答えを出したいと思います。
core i7-12700とは?
Pコア、Eコアについて
core i7-12700について説明する前に、「Pコア」、「Eコア」について簡単に説明します。
インテル第12世代、Alder Lake-S最大の特徴が、1つの作業を処理することに特化した「Pコア」、並列作業を処理することに特化した「Eコア」という、2種類のコアを内蔵していることです。
例えば、配信や録画をしながらゲームをプレーという状況を想定します。
普通のCPUであれば、配信や録画によって、CPUに負担がかかり、ゲームのパフォーマンスに悪影響します。
しかし、Alder Lake-Sであれば、ゲームの処理は「Pコア」で、バックグラウンドで発生する配信や録画などの処理は「Eコア」と役割分担できるようになります。
作業を振り分けることで、CPUの負担が分散し、Pコアの性能を最大限の効率で稼働させることができ、結果としてゲームパフォーマンスへの影響を最小限にします。
core i7-12700とcore i5-12400の違いについて
型番 | core i7-12700 | core i5-12400 |
コア数(Pコア+Eコア) | 12(8+4) | 6(6+0) |
スレッド数 | 20 | 12 |
L3キャッシュ | 25MB | 25MB |
TBM3.0時最大クロック(Pコア+Eコア) | 4.9GHz(4.8GHz/3.6GHz) | -(4.4GHz/-) |
定格クロック(Pコア/Eコア) | 2.1GHz/1.6GHz | 2.5GHz/- |
内臓GPU | UHD770 | UHD730 |
Processor Base Power(PBP) | 65W | 65W |
Maximum Turbo Power(MTP) | 180W | 117W |
参考価格 | 4万5,000円 | 2万5,000円 |
上記の表はcore i7-12700のスペック表です。比較対象として以前レビューしたcore i5-12400のスペックも掲載しています。
Alder Lake-Sには多種多様なモデルがあり、それぞれ「Pコア」、「Eコア」の数が異なります。また、「Eコア」を搭載せず、「Pコア」のみ搭載というモデルもあります。
core i7-12700の場合、「Pコア」は8つ、「Eコア」は4つあります。つまり計12コアということになります。
ただし、ハイパースレッディングに対応しているのは「Pコア」のみになりますので、スレッド数は20と中途半端な数になります。また、無印版なのでオーバークロック不可です。
一方、core i5-12400の場合、「Pコア」は6つ、「Eコア」は0で、「Pコア」のみ搭載というモデルになります。ちなみにこちらもオーバークロック不可です。
core i7-12700
core i7-12700F
core i7-12700の性能をcore i5-12400と比較
テスト環境
CPU | core i5-12700 | core i5-12400 |
CPUクーラー | SE-224-XTA | |
CPUグリス | MX-4 | |
マザーボード | MSI PRO B660M-A | |
メモリ | DDR4-3200 8G×2(KD48GU880-32A160U) | |
グラフィックボード | RTX3060 | |
ストレージ | Crucial P2 1TB | |
電源ユニット | 750W(V750 Semi-Modular RS750-AMAAG1-JP) | |
OS | Windows 11 Home | |
Nvidia ドライバ | 512.59 |
今回のCore i7-12700の検証で使用する、テスト機のスペックです。
Alder Lake-Sでは、DDR5メモリに対応していますが、今回はDDR4対応のマザーボードを使用するため、DDR4-3200のメモリを使用します。
電力制限解除について
Core i7-12700のPBPは65Wですが、MTPは180Wです。つまり電力制限を解除することで性能が変わってきます。
Cinebench R23を実行してる時の、core i7-12700のクロック周波数の推移です。電力制限解除時は4.1Ghz付近を維持していますが、65W制限をかけると、3.1Ghzまで落ちてしまいます。
これは65Wに収まるように、自動的にクロック周波数が落とされていることを示しています。
そこで今回は65W時、電力制限解除時で性能にどれほどの差が生まれるのかについても検証したいと思います。
なお、最初に使用したマザーボードのAsrock B660M PRO RSでは電力制限解除は140Wまでが限界でした。
そこで新たに、MSI PRO B660M-Aを購入し、検証したところ、このマザーボードであれば、電力制限は無制限まで解除可能でした。今回はMSI PRO B660M-Aを使用して検証しました。
今回の検証では65W制限時と電力無制限解除の2パターンで計測していきます。
core i5-12400の場合、電力制限を解除しても70Wまでが限界なので、Core i7-12700よりも電力制限解除の恩恵は少ないです。一応、今回の検証ではcore i5-12400の方でも電力制限を解除しています。
Windows 11とWindows 10のパフォーマンスの違いについて
Alder Lake-Sのパフォーマンスを最大限に発揮するには、OS側が「Pコア」、「Eコア」を正しく処理を振り分ける必要があります。
ただ、Windows10ではこの振り分けがうまくいかない可能性があります。
例えば、ハンドブレーキのエンコードを実行すると、windows 11環境であれば、全コアに負荷がかかるのに、windows 10環境だと、Eコアのみに処理がかかるといった事態が起こります。
実際、一部のアプリのベンチマークを走らすと、windows 11の環境のほうがパフォーマンスが出ます。
Alder Lake-Sでは無難にwindows 11を使うことをおすすめします。もちろん、今回の検証でもwindows 11を使用します。
core i5-12400のように「Eコア」がないモデルであれば、windows 10環境でも問題ありません。
一般的なベンチマーク
Cinebench R23
CPUの性能を計測するためのベンチマークソフトの定番中の定番のシネベンチです。シネベンチR23、R20、R15の3種類があり、今回は最新のR23で検証しました。
core i7-12700ですが、電力制限を解除するだけで、マルチスコアが約6,000ほど上昇しました。逆にシングルスコアに関しては電力制限を解除してもほとんど変化はありませんでした。
core i5-12400との比較ではマルチスコアで約10,000ほど差が開きました。
core i5-12400は6コア12スレッドで、core i7-12700は12コア20スレッドなので、マルチスコアで差が開くのも納得がいきます。
次にRyzen 9 5950Xとcore i7-10700と比較してみました。core i7-12700は、ryzen 9 5950Xと比較すると、マルチスコアでは負けています。
ただ、ryzen 9 5950Xは、Ryzen最上位モデルで、16コア32スレッドという圧倒的なマルチスレッド能力が売りのCPUです。
一方、core i7-12700は12コア20スレッドです。にもかかわらず、スコア的にかなり肉薄している印象です。
また、値段も2~3万円ほど、core i7-12700のほうが安いです。それを考えると、core i7-12700はお得なCPUだと素直に感じました。
一方、core i7-10700との比較ですが、これに関しては圧勝しています。
core i7-10700もわずか2世代前のcore i7なのでそこまで古くありません。にもかかわらず、スコアでは1万ほどcore i7-12700が上回っているので、技術の進歩を感じました。
3D MARK Time Spy CPU score
Time Spyは本来ならゲームグラフィックス性能を計測するベンチマークソフトですが、CPUの性能だけを計測する項目も実は存在します。今回はそこだけを見ていきます。
結果ですが、core i7-12700がcore i5-11400Fを5,000程上回りました。
PC MARK 10 Extended(digital content creation)
PC MARK 10はPCの総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークソフトです。
GPU機能を使いたくなかったので、「Open CL」と「Use hardware-accelerated video processing」をオフにして計測しました。
今回は写真編集、動画編集、レンダリングの性能を計測する、「digital content creation」のみを見ていきます。
結果ですが、core i7-12700がcore i5-12400を1,500程上回りました。写真編集、動画編集などのクリエイティブ作業でも、core i7-12700のほうが快適にこなせそうです。
Blender
BlenderはCGのレンダリングパフォーマンスを測定するベンチマークソフトです。1分間に作成できるサンプル数で結果は表示されます。つまりサンプル数が多いほど優秀ということです。
monsterレンダリングのテスト結果ですが、core i7-12700とcore i5-12400の間にかなりの差があることがわかりました。また、無制限解除、65W制限時の比較でも大きな差がつきました。
動画エンコード
X264 FHD BENCHMARK
X264 FHD BENCHMARKとは、H. 264形式のフルHDの動画をエンコードする際の性能を計測するベンチマークソフトです。フレームレートが高いほど、パフォーマンスが良いということになります。
core i5-12700がcore i5-12400より約30フレームほど高い結果になりました。また、無制限解除、65W制限時の比較でも大きな差がつきました。
power directer
動画編集ソフトのpower directer 18で約4GBの動画を「H264、フルHD」でエンコードにかかった時間を比較します。
エンコードにかかった時間 | |
core i7-12700(無制限解除) | 3分57秒 |
core i7-12700(65W) | 4分02秒 |
core i5-12400 | 5分16秒 |
結果ですが、やはり一番早かったのはcore i7-12700でした。特にcore i5-12400と比べて、30秒ほど短縮できています。また、無制限解除の方が若干ですが早かったです。
一般的なベンチマークだとcore i7-12700とcore i5-12400でかなりの差がついた印象です。また、電力制限解除の恩恵も感じました。
ゲームベンチマーク
core i7-12700(140W)とありますが、正しくはcore i7-12700(無制限解除)です。すべて修正するのは大変なので、あえてそのままにしています。また、ビデオカードがRTX3060ということで、かなり差が出にくい環境なのでご了承ください。
FF14(フルHD、標準品質)
FF15(フルHD、軽量品質)
Forza Horizon 5(フルHD、最低)
サイバーパンク2077(フルHD、低設定)
Rainbow Six Siege(フルHD、最低)
Fortnite(フルHD、低設定)
Apex Legends(フルHD、最高)
Varorant(フルHD)
ゲームでは、core i7-12700の無制限解除、65W時ではほとんど差がつきませんでした。
ゲーム配信・録画時のフレームレート計測
Twitch Studioで配信し、Bandicamで録画しながら、サイバーパンク2077(フルHD、低設定)のベンチマークをプレーしてみました。ちなみに、Twitch Studioの設定は下記の通りです。
Twitch Studioの設定 | |
プリセット | 1080p60 |
解像度 | 1920×1080 |
FPS | 60 |
ビットレート(kbps) | 6000 |
エンコーダー | X264(ソフトウェア) |
core i5-12400の場合
通常プレー時のフレームレート | 134.66 |
配信・録画時のフレームレート | 115.09 |
フレームドロップ | 209 |
描画遅延フレーム | 3 |
core i7-12700の場合
通常プレー時のフレームレート | 135.77 |
配信・録画時のフレームレート | 120.20 |
フレームドロップ | 0 |
描画遅延フレーム | 3 |
core i5-12400の方は、CPUにかなりの負荷がかかり、フレームドロップの発生が多いです。一方、core i7-12700の場合、Eコアが配信・録画の処理を行うため、CPU負荷が抑えられており、フレームドロップの発生が0になっています。
CPU温度について
リテールクーラー装着時
core i7-12700にはLaminar RM1という、リテールクーラーが付属します。今までのリテールクーラーより大型化し、冷却力は上がったと言われています。
ただ、残念ながら、core i7-12700においては、リテールクーラーでは明らかに冷却不足です。
無制限解除すると、CPU温度は100度に達して、サーマルスロットリングが発生しています。一方、65W制限時だと、80度前半に収まります。
FF15ベンチマーク実行時のCPU温度推移です。ちなみに無制限解除時です。Cinebench R23実行時よりはマシですが、ゲーム中も一瞬だけ100度に到達することもあり、それなりに高温です。
リテールクーラーだと負荷がかかると、ファンが全開で回るので騒音が凄まじいです。
SE-224-XTA装着時
リテールクーラーでは冷却力不足なので、社外品のCPUクーラーを装着して、再度検証します。使用したCPUクーラーはID-COOLINGのSE-224-XTAです。
SE-224-XTAを使っても、無制限解除時でも、CPU温度は80度以上に到達してしまいました。一方、65W制限時では50度代以内に収まっています。
Cinebench R23より負荷が重いPRIME95実行中のCPU温度の推移です。ちなみに、無制限解除時です。80度後半くらいを推移し、最高で93度まで上昇しました。
無制限解除でPRIME95を実行するのなら、簡易水冷や大型の空冷CPUクーラーを使った方が安心だと思います。
FF15ベンチマーク実行中のCPU温度です。ちなみに無制限解除時です。CPU温度はおおむね60度内に収まっています。
リテールクーラーでも運用は可能ですが、CPU温度は全体的に高めですし、なによりも騒音が凄まじいです。無難に別途CPUクーラーを装着することをおすすめします。
消費電力について
CinebenchR23実行時の消費電力です。無制限解除だと約160W前後消費しますが、PL65W時だと文字通り、65W前後を消費という感じになります。
Cinebench R23よりも負荷が重い、PRIME95を実行したところ、無制限解除だと約190W前後消費します。
無制限解除時のアイドル時の消費電力です。20W以内に収まっています。
FF15ベンチマーク実行時の消費電力です。
変動はありますが、おおむね50W~60Wをいったりきたりといった感じです。電力制限を解除してもゲーム実行時であれば、CPU負荷はあまり高くならず、そこまで消費電力は上がりません。
電力制限を解除すると消費電力はかなりのものです。ただ、それはCinebenchR23を実行など、特殊な事例においてのみです。負荷が低い状況であれば、そこまで高い消費電力になりません。
core i7-12700とcore i5-12400、どっちがおすすめ?
core i7-12700はこんな人におすすめ
Cinebench R23マルチが2万超え、シングルが1800超えと、現状市販されているCPUの中でも性能は上位に位置します。
RTX3080などの上位のビデオカードを使用するのであれば、まさにピッタリのCPUといえます。また、「Eコア」が搭載されているので、ゲームをプレーしながら録画、配信するという人にもおすすめです。
core i5-12400はこんな人におすすめ
使うビデオカードがRTX3060などのミドルクラスであれば、正直、core i5-12400で十分です。
ただ配信、録画をやりながらゲームをするのであれば、「Eコア」が搭載されたcore i7-12700を使用するのも悪くありません。
まとめ
core i7-12700は4万円代ということを考えると、破格の性能を持ったCPUです。ハイエンドクラスのビデオカードを使う予定なら、まず間違いなくおすすめできます。
また、Eコアも搭載しているので、たとえミドルクラスのビデオカードでも、配信・録画をするのなら、core i5-12400よりcore i7-12700のほうがおすすめできます。
core i7-12700
core i7-12700F
動画はこちらから↓。
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